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作家が危機対応をズバッと指南!

怒りのリリース連発!メディアが導火線となった「出光騒動」は泥仕合の様相

城島明彦(ジャーナリスト)

広報業界を30年以上見続けてきた作家・ジャーナリストが時事ニュースの中から特に注目すべき事案をピックアップ。その本質と求められる広報対応について解説する。

終戦記念日の8月15日、石油元売り大手の出光興産(以下出光)の広報が、吠えた。創業家の反対で硬直状態に陥っている「昭和シェル石油との経営統合問題」に関して副社長による記者会見を行い、それまで控えてきた創業家への非難を解禁。「宣戦布告」とも取れるプレスリリース「当社大株主から公表された文書に対する当社見解と対応等について」を発表し、“出光騒動”は混迷の色を強め、泥仕合の様相を呈してきたのである。

“怒りのリリース”の一部を引用する。「当社は、引き続き、本年7月11日開催の当社大株主との協議での合意に従い、当社大株主に対して次回協議の打診を行っておりますが、当社大株主側からは当社からの書簡の受け取りそのものを拒絶されており、本日現在、次回協議の日程は決まっておりません。当社は、当社のすべてのステークホルダーの共同利益の確保の観点から、継続して当社大株主に協議を要請してまいります」

当社大株主というのは、言うまでもなく創業家のことである。創業家代表の出光昭介氏は、ベストセラー小説『海賊とよばれた男』のモデル出光佐三氏の長男。第五代社長を務め、現在名誉会長。今の社長や副社長はかつての部下だ。昭介氏の長男・次男は出光にいるが、冷遇されており、「創業家の一人を取締役に」との要求も見られ、“創業家の復権闘争”的な一面も垣間見える。

創業理念とは? 創業家とは?

創業者がすでに没した時代の社長が重大局面で必ず口にする言葉は「○○さんだったら、どう考えるか。どうするか」である。創業者のいない企業はない。どの企業も、ビジネスが成功して企業規模が大きくなると、「創業の志」とか「創業理念」をホームページに掲げる。出光も例外ではない。同社の創業者・出光佐三は立志伝中の人物で、“古き良き時代の日本式経営のお手本”ともいうべき「大家族主義」「人間尊重」「黄金の奴隷たるなかれ」など五つの主義を社是として掲げ、「無我無私」「失敗は授業料」「実行有言」など傾聴に値する名言を数多く残した。私が好きな言葉は「順境にいて悲観し、逆境において楽観せよ」だ。

経営陣に限らず、広報も「創業理念とは?」「創業者の志とは?」「創業家をどう遇するか?」をいつも考えていなければならないという教訓を“出光騒動” は教えてくれる。

経営理念・社風の違いは障害か

創業家が合併に反対する主な理由は、出光が純血主義(民族主義)で組合もない会社なのに対し、昭和シェルには英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェル(以下RDS)資本が入っており、経営理念・社風が異なり、うまくいかないという主張である。だが、合併を陰で主導しているのは経産省。石油業界は、省エネ車の増加、少子化による人口減などで供給過剰に陥って久しく...

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