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デジタルで変わる ニュースの流通構造

日清食品「10分どん兵衛」 ネットで話題化から売上50%増の裏側

日清食品

小売店の棚から商品が消えるほど大きな反響を呼んだ「10分どん兵衛」。企画の設計からネット上での話題化に至ったポイントまで「日清のどん兵衛」のコミュニケーションに携わる担当者が裏側を明かした。

※本記事は8月30日・31日に宣伝会議主催のイベント「プロモーション&クリエイティブフォーラム2016」内で行われた講演をレポートしたものです

ネットでの盛り上がりを受けて、尾上氏は「謝罪」形式の企画を提案。特設サイト上ではマキタスポーツと「日清どん兵衛」を担当するブランドマネージャーの対談も実施した。

企画提案から17日で実現

編集部:本日は「10分どん兵衛」が生まれた経緯や、これまで「日清のどん兵衛」でどんな施策を展開してきたのかもお伺いしていきます。

安武:私は日清食品に入社して4年間は営業に、それから10年間は広報部に所属していました。その後、宣伝部でカップヌードルのSNSなどを担当し、現在はどん兵衛の宣伝業務に携わっています。

尾上:私は電通で主にデジタルを基軸としたキャンペーンを担当しています。「10分どん兵衛」については企画とコピーを担当しました。

安武:元々はタレントのマキタスポーツさんが提案した「お湯を入れて10分待ったどん兵衛がめちゃくちゃ美味しい」という食べ方がネット上で話題になっていたので、これを活用した企画を尾上さんにお願いしたことが発端ですよね。

尾上:時を同じくしてどん兵衛のツイートを検索していたら「日清食品はこの噂を知っているのか」「日清に聞いてみたい」と話題になっていたのを知り、「正直知りませんでした」と謝罪をしましょう、と急いで安武さんに提案しました。ネット上ですでに盛り上がっている話題に企業は入りにくいものですが、「謝罪」という形ならば入りやすいかなと。企画が実現するにあたって特徴的だったのは、ウェブならではのスピード感ですね。

安武:尾上さんから企画を受け取ったのが2015年12月1日。同7日に社長プレゼンを行い、14日には対談の撮影、18日に公開と急ピッチで進めました。ウェブならではのスピード感を活かしたかったので、当日に決まったことも多かったですよね。

尾上:特設サイトで公開した、マキタスポーツさんと「日清のどん兵衛」を担当するブランドマネージャーの対談内容は事前に打ち合わせもしていません。決めたのは「マキタさんが怒り、日清が謝罪をする」という設定だけ。そうしないと段取り臭くなる可能性があったので。ぶっつけ本番で話してもらったところ、想像以上に面白いものになりまして、原稿を書いていて楽しかったです。

安武:公開直後、あっという間にツイート数が増えていき、Yahoo!のトップに。どん兵衛は今年で発売40周年となりますが、通常はロングセラーブランドの売上が急に上がることはありません。それが数日後には「店頭からどん兵衛だけが消える」という現象が起こり、売上が前年比150%まで伸びました。流通の方々も驚いたと思います。

「暴走している」と話題に

2015年度からは加山雄三と佐藤健を起用したキャンペーンを展開。

尾上:どん兵衛のウェブ施策はありがたいことに毎回話題化と商品の売上に貢献できているのですが、1年で10以上と施策の数がとにかく多く、実践しながら学んでいるという点は強いのかもしれません。

私自身は2015年度から始まった加山雄三さんと佐藤健さんを起用したコミュニケーションのリニューアルから参加させてもらっています。加山さんをYouTuberにしたり、渋谷駅でどん兵衛を実際に味わえるリアル店舗「どんばれ屋」とウェブをつなげるところから始まり、その後に展開した企画が「10分どん兵衛」でした。

さらに同時に進行していた、ひとりぼっちのクリスマスを応援する「どんばれぼっちクリスマス」という施策で、「10分どん兵衛」に続いて年末の需要を喚起。「クリスマスはどん兵衛を買おう」と話題になり、10万以上のツイートがありました。年始にはバレンタインに合わせた「どんばれンタイン」という企画で約3万ツイートを記録しまして、Yahoo!のトップにも取り上げられました。

安武:「どん兵衛公式ホームページが暴走している」という賛辞の言葉もいただいています(笑)。

尾上:今年7月に渋谷の「どんばれ屋が閉店したときには、店舗の外から見えるようにヤカンを置き、その隣にどん兵衛からのメッセージ「お湯を入れるだけだから楽だったのに……。ありがとうございました」というメモを添えました。これもTwitterで話題となり、多くのメディアに露出しましたね。

安武:この施策の経費はほぼヤカン1個分しかかかっていませんが、広告換算すると数千万円になりますね。

渋谷駅のリアル店舗「どんばれ屋」閉店時には店舗の外から見えるようにヤカンとメッセージを置き話題に。

「商品を売る」から逃げない

尾上:話題になる企画のポイントをまとめると、
(1)商品の置かれたストーリーや文脈を意識する
(2)スピード感
(3)状況に合わせて提案内容をどんどん改善するフレキシビリティ
(4)商品のキャラクター設計をきちんとする。
そして一番大事なのが、
(5)商品から逃げずに、売ることを目指す、
ことだと思います。ただバズればいいというのは違いますね。

ちなみに、どん兵衛は「ちょっと頭がおかしいけど、その自覚がない人」というキャラクター設定を守るようにしています。そうすると大体、企画が当たるようになりました(笑)。

安武:今後もたくさんの企画を考えています。突然色々出しますから、乞うご期待です(笑)。

電通 CDC プランナー/イラストレーター
尾上永晃(おのえ・のりあき)氏

2009年電通入社組。「#こち亀よ永遠に」「低予算型テーマパーク亀やしき」「エスティマ Sense of Wonder」「GREEN NAME」「カンヌからの絵はがき」など、ジャンルを選ばず話題化と売上の両方を達成するキャンペーン設計を意識して暮らしている。

日清食品ホールディングス 宣伝部 係長
安武雅之(やすたけ・まさゆき)氏

1998年入社。営業を経て、2002年から広報部でPR・イベント業務、CSR業務などを担当し、2012年より宣伝部。「日清のどん兵衛」などの広告宣伝の制作業務に携わる。

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