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企業価値を左右する「経営と広報」の一体化

日本コカ・コーラ、新社屋からブランド資産を発信 「サステナビリティへの強い決意」示す

日本コカ・コーラ

7月29日、日本コカ・コーラは渋谷区の新社屋でティム・ブレット社長による会見を開催。環境や社会と深く関わるサステナビリティ(持続可能性)への強いコミットを宣言している。同社の企業広報を統括する後藤由美副社長が考える、経営戦略における広報の役割とは。

7月29日には報道関係者向けに本社ビルでレセプションの場を設けた。(写真右から)ティム・ブレット社長のほか渋谷区長の長谷部健氏、コカ・コーラ社のチーフ・オリンピック担当・オフィサーを務める北島康介氏が登壇した。

ソーシャルモニタリングを強化

─強いブランドを持つグローバル企業の日本法人として、経営陣から広報部門に最も期待されていることは。

日本コカ・コーラの経営陣の多くは外国人で、彼らは広報・パブリックアフェアーズの部門に非常に大きな期待を寄せています。私は数少ない日本人の役員として、彼らに日本市場における広報活動の重要性を理解してもらうためにブリーフィングを行います。彼らの協力を得ながら経営戦略を対外的に発信していくコーポレートコミュニケーションこそが、私の重要な役割になります。

特に国内では今後、「コカ・コーラシステム」のあり方を分かりやすく伝えていきたいと思っています。正直、私自身も入社するまでシステムの仕組みを知りませんでした。日本コカ・コーラは商品企画やマーケティングを手がけ、6つの独立した各ボトラー社が全国で製品の製造・販売を行う─これが「コカ・コーラシステム」です。この体制を「ゆるぎない強み」として発信していきたいですね。

日本コカ・コーラ 広報・パブリックアフェアーズ本部副社長 後藤由美(ごとう・ゆみ)氏
1998年米国ジョージタウン大学、経営大学院(ビジネス・スクール)卒業。MBA取得。2012年6月、日本コカ・コーラ入社、現職にいたる。コカ・コーラ協会 副会長、公益財団法人コカ・コーラ教育・環境財団 常務理事。

─現在の広報部門の体制は。

日本コカ・コーラの広報・パブリックアフェアーズ本部には図1のとおり「コミュニケーション」「危機管理」「CIC(お客さま対応窓口)」「政策・渉外」という4つの部門があります。本国の方針も踏まえ、日本でも今後さらにデジタル領域のコミュニケーションに注力していく方針です。その一環として、広報部門では企業ウェブサイトの「Coca-Cola Journey」を監修しています。また、近年はソーシャルメディアのモニタリングの必要性も高まってきたので、2012年後半からCICの部門で外部スタッフと対応しています。

─2013年に本社のデジタルメディア担当者が「Kill the press release(2015年にはプレスリリースを廃止する)」と宣言し、日本のPR業界でも話題になりました。その後の動向は。

本国では今もプレスリリースはありますし、まだまだ議論の余地があると思います。ただ海外では記者とのコミュニケーションでTwitterを使う機会も増えていると聞きますし、リリース以外の手段にも広がっているのは確かです。日本は状況も異なりますし当分はなくならないですが、情報発信の方法が変わるようなことがあればすぐお知らせします(笑)。

全社員が広報パーソンになる

─新オフィスには多数のデジタルサイネージがあり、社内で表彰された社員が紹介されていました。インターナルコミュニケーションの取り組みは近年、変化しましたか。

新社屋は「コカ・コーラ」のグラスボトルや王冠をモチーフとした内装をオフィス中に施すなど、ブランド資産を活かしクリエイティビティを発揮できる空間づくりに力を入れています。

さらにグローバルでは「社員一人ひとりがコカ・コーラシステムを代表するアンバサダーになる」というミッションのもと、その名も「コカ・コーラアンバサダー」というプロジェクトを進めています。日本でも2013年、本国から講師を招いて当社の幹部とボトラー社の代表を対象にセミナーを実施しました。この活動が全国に浸透するよう、以降、当社では全社員を対象にレクチャーや社内イベントを継続しており、ボトラー社でもセミナー受講者が自社に持ち帰って展開しています。

セミナーではアンバサダーとして活動する動機づけを重視しています。中でも力を入れているのが、コカ・コーラシステムの歴史をしっかりと学んでもらうこと。その結果、社員が講演会など公の場だけでなく、普段の生活の中で折に触れて話ができるようになるのが理想ですね。米国では「コカ・コーラ」は「文化」と捉えられていますし、何より社員は消費者に最も近い存在です。彼らがアンバサダーとして加わることで広報活動も今以上にパワフルに進化していくと期待しています。

現在は社員一人ひとりが地域のボランティア活動やスポーツ振興などを積極的に行っています。私も大学や高校に出向き、将来を担う次世代の方々を対象にコカ・コーラシステムのサステナビリティの取り組みについてプレゼンテーションをする機会が増えてきました。また8 月1日には国土交通省の主催で「水の日」に関する講演会が都内で開かれ、水資源の活用についてお話ししてきたところです。

新社屋の外観は「コカ・コーラ」のグラスボトルの緑がかった色を模したデザイン。

地域のボトラー社の広報も連携

─7月の新社屋発表会でティム・ブレット社長が「(新社屋は)サステナビリティへの強い決意の表れ」と語っていたのも印象的でした。

コカ・コーラシステムではサステナビリティのフレームワークを「me(個人・お客さま)」「w e(地域社会)」「world(環境)」という3つの領域に分類して考えています。いずれも各国で目標数値と達成年度を設定して四半期ごとに何%達成したかを厳しく評価します。

新社屋の発表会で本社を構える東京・渋谷区の長谷部健区長にもお越しいただき「国際都市としての成熟を目指すなかで、ともに歩む」という宣言があったとおり、「地域社会への貢献」は重要なミッションだと考えています。環境の取り組みの中には、2020年までに国内工場で使われたすべての水を100%自然に戻すことを目標とする「ウォーター・ニュートラリティー」というプロジェクトがあります。こうした水資源への配慮は新社屋の設計にも反映されており、効率化したシステムにより米国の法定基準値(Energy PolicyAct)と比較して年間約239万リットルの節水が期待できます。

広報部門として最も力を入れていきたいコーポレートコミュニケーションの軸となるのは、一連のサステナビリティの分野を支えている「コカ・コーラシステム」です。6つのボトラー社によるフランチャイズシステムという強い母体があってこそ、企業としての持続的な成長が可能となります。この姿勢はこの先もずっと変わりません。各ボトラー社の広報部門のメンバーとも定期的に打ち合わせしながら、戦略を共有し、地域に根差したプランを実行していきます。

2016年版のサステナビリティレポートでは、コカ・コーラシステムのフレームワーク(me・we・world)について解説。「健全な地域社会が健全なビジネスの基本」という考えのもと、グローバルで地域に根差した事業に注力する背景を述べている。

新社屋の屋上にあるデッキスペース。節水型器具の設置やろ過した雨水の再利用などにより、米国の法定基準値(Energy PolicyAct)と比較して年間で約239万リットルの節水が見込まれている。LEDの導入などにより、基準値(ASHRAE)と比較し建物全体のエネルギー削減率は38%に達する。

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