業界ごとに存在する数多くの専門メディア。広報担当者にとっては、メディア対応の登龍門となることも多いでしょう。その編集方針やヒット企画、注力テーマを聞き、関係構築のヒントを探ります。
食分野の専門書・雑誌刊行に特化する柴田書店が、外食業界の経営指針を示すべく発行する『月刊食堂』。読者はビストロから居酒屋、回転寿司、ファストフードまで、あらゆる外食店の経営層。経営の効率化から人材研修、推奨メニューなどの情報を発信する。
編集部による覆面取材も
「成長店のビジネスモデルを広く数値化して伝えます」と通山茂之編集長が語るように、メニューから売上、コスト構造までをデータで示すのが特徴。4月号の「お値段を上げよう」特集では、適正な利益を保つため「原価の4倍の価格を」と編集部が提言。原価率を25%以内に抑え、かつ客から高い評価を受ける各店の人気メニューを紹介した。取材の手間・労力は惜しまず、20店舗の協力を得て40以上のメニューを紹介する。
昨今、すべての経営者は自ら情報を集め、店舗の目指す姿について考える必要がある。結果、あらゆるデータをもとに業界像を描く同誌の手法はますます注目を浴び、この2年で売れ行きも伸びている。「どうすれば店は発展するのか、日々データをもとに考える方針が伝わっているのでしょう」。
その取材姿勢が反映されている連載が「覆面店舗チェック」で、5月号ではサンドイッチ店「サブウェイ」を取り上げた。全国17店舗へ実際に記者が入店し、商品を購入。サービス姿勢からメニューが出るまでの時間、席のシートが擦り切れていたといった点まで店舗別にレポートした。「取材先から問い合わせがあっても対応できるよう、購入の際のレシートは全保存する」との徹底ぶりだ。外から見えない居酒屋の個室にいる来客数は部屋の前の下駄箱の履物数を数え、推察するという。
外食以外の業界情報も求める
「食以外の業界からの情報も求めています。例えば『失恋休暇』制度を導入した美容院があると聞けば、そのアイデアが読者の参考になる可能性があるかを考えます」。業種が異なっても従業員の年齢構成が似た業界からは学べるという。そんな視線を意識して …