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PRになぜクリエイティブが必要か

ネイティブアドとは何か? 「PRか、広告か」という争点

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業)

コンテンツ活用で避けて通れないのが、「PRか、広告か」という議論だ。ネイティブアド、戦略PR、コンテンツマーケテイングなどが広がるなか次世代型の広報を模索する一方で、正しい理解を深めておきたい。

2015年から東北芸術工科大学で教鞭を執っている。そのためだろうか、初めて会った方から最近「クリエイター」と間違われる。大学では主に戦略PRやマーケティングコミュニケーションについて教えている。「クリエイター」という響きはかっこいいので決してイヤではないが、私は「クリエイター」ではない。自分で自分を以前から「PR屋」、あるいは「宣伝屋」とあえて呼んでいる。

ところで、なぜ「クリエイター」と思われるようになったのか。それは「PR屋」であるにもかかわらず、実際に「クリエイティブ」と言われる分野の仕事に携わる機会が増えているからだ。

コンテンツ企画とPR視点

最近は「コンテンツマーケティング」という考え方がマーケティング業界で普及してきた。コンテンツマーケティングとは、消費者が「面白い(役に立つ)」と思うようなコンテンツを企業が提供し続けることで顧客をファン化し、消費行動などを促すマーケティング手法のことだ。

例えば、「口コミ」の拡散を狙ったバイラルコンテンツを制作して動画サイトなどで流したり、複雑で多岐にわたる数値データなどをデザインで整理して見やすく表現したりする「インフォグラフィック」などが代表的な手法である。

私は出身がテレビ局であり番組宣伝活動を行った期間が長かったので、ずいぶん前から現在で言うこの「コンテンツマーケティング」の手法を用いてテレビ番組のプロモーション(番宣活動)を実施してきた気がする。一般的には、企業が自社制作のコンテンツを自由にウェブサイトや動画サイトなどで公開できるようになったこの10年ほどの間に普及したと言われている。最近では一般企業が自社のPRや販促目的で社内リソースを用いて、コンテンツを制作する機会が増えた。

私自身が直接、映像編集を行ったり、グラフィックデザインを制作したりするわけではないが、こうした「コンテンツ」の企画やプロデュースにPRという視点で携わり、実際にコンテンツをプロデュースすることが増えた。こうしたこともあってPRの仕事が日増しに「クリエイター」の仕事に近くなってきたのだろう(図1)。

図1 これまでのPRとこれからのPR

「PR」という仕事の変遷

長い間、どちらかと言えば「PR」と「クリエイティブ」は遠い仕事とされてきた。PR担当者というのはプレスリリース作成と配信、メディアリレーションズ、記者会見の実施……といった「広報実務」を担当することが一般的であった。従って一般的なPR担当者はクリエイティブの制作に関わる仕事、例えば映像やグラフィックの企画・制作などについては必ずしも詳しくないことも多い。

ところが最近では、PR部門が自社のSNSの運営や、公式ブログの記事掲載、動画コンテンツの作成と配信までインハウスで行う企業も増えてきた。「事務方」の領域とされてきた「広報部」も、マーケティング部門の「企画」「制作進行」の業務を超えて一気に「クリエイティブ」分野に近づいてきた感がある。

企業内のコミュニケーション部門は概ね、以下のように分かれていた。
(1)宣伝部(マーケティングコミュニケーション部)
(2)広報PR部 ( コミュニケーション部)
(3)営業部(販促部)

営業部(販促部)は店舗やルートセールスなどに関わることが主であり、「メディア」に直接関わることは今も昔も一般的には少ない。一方で、最近は「マーケティングPR」という考えが広がってきた。「PR的な手法」を用いた「販促活動」も一般的になったため、宣伝部(マーケティングコミュニケーション)と広報PR部(コミュニケーション部)の境界線が曖昧になりつつある。

主に宣伝部は「広告出稿」の計画立案と「制作物」の管理を行う(原則有料で広告を掲載)。一方の広報PR部は「メディアリレーションズ」「社内広報」など原則無料で掲載・発行する業務に特化していたが、最近はその不文律も崩れてきた。

例えば、新商品の発売開始の際の社長記者会見は広報部が行うのか? 宣伝部(マーケティングPR部門)が行うのか? ブロガーリレーションを強化し企業ブランドを構築する活動は何部なのか? こうした境界線に関する議論が社内で地味に行われてきた。

広報的視点からの「ステマ」

広報部はフリーパブリシティが原則であり、露出する(される)情報は「客観的」である。第三者であるメディアの視点が入るため「信頼性」が担保される。ただし、露出したいタイミングで確実に露出できるとは限らない。その点に難がある。

一方、宣伝部はペイドパブ(広告)が原則である。露出時期、媒体、タイミング、露出内容は事前に計画可能であり確実性を担保できる。ただし …

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