日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

PRになぜクリエイティブが必要か

世界の拠点別にPR誌制作 貝印「100年企業のプライド」発信

貝印『 FACT magazine』

1908年創業の刃物メーカー・貝印は2015年8月から、グローバル報を制作している。拠点がある街をテーマとしたガイドブック仕立てで、社内外に向け1万部を発行。テキストは日英表記で、商業誌さながらのデザインやクオリティにこだわる。

img01

拠点がある街の「ものづくり」やカルチャーに注目
毎号、巻頭特集は拠点のある街のグラビアから始まる。第4号の「上海」特集では、世界中からDJが集まる上海のクラブ「The Shelter」の賑わいをレポート。中国の「モノ選び」が変わり、先進的なカルチャーが根付きつつある様子を届けている。


img02

貝印は2015年8月から経営企画室を中心に、季刊で社内外向けのグローバル報『FACT magazine』を発行している。レイアウトや印刷、紙選びにもこだわり、一般の企業の広報誌とは一味違う仕上がりだ。

最も注目すべきは毎号、貝印の拠点がある都市をテーマとしている点だ。過去3号ではそれぞれ、ポートランド、ハノイ、岐阜を特集している。職場や工場だけでなく、現地のクリエイターやレストランにも取材するなど、その仕上がりはガイドブックさながら。グローバルの社員を対象としているためテキストは日英表記で、出張に出向く社員にも重宝されている。

取材・編集は執行役員経営企画室室長の郷司功氏を中心に、外部のカメラマンやアートディレクター、ライターら約10人のチームを編成。街の風景や自社の製品・技術を魅力的に表現するとともに、社員の自然な表情を引き出したグラビアにも引き込まれる。現地に赴いての取材・撮影には1週間をかけるというこだわりぶりだ。

img03

ポートランド(1号)、ハノイ(2号)、岐阜(3号)と続く。7月末には上海(4号)も発行予定。

クリエイティブを競争力の根幹に

img04

世界に誇るクオリティを実感 「パーマネントコレクション」 
アメリカの警察で公式採用されているナイフ、白内障手術で使う医療用刃物など、多彩なジャンルを扱う貝印の技術力にフォーカスする連載。社員にも広く知られていない実績をストーリー仕立ての記事と美しいビジュアルで訴求。

実は貝印は2012年、欧州に本社を持つクリエイティブエージェンシーの日本法人と中国法人を買収、子会社化している。グローバルマーケティングの強化が目的であり、「企業としての競争力の根幹にはクリエイティブの力が必要」という考えがあってのことだ。『FACT magazine』の発行も、この流れを汲んでいる。

「岐阜の刃物の会社」というイメージが強い貝印だが、1990年代に本格化した海外進出はこの10年で一気に加速している。2016年3月期の通期決算では初めて海外売上比率が5割を超えた。全従業員のうち3分の2を外国人が占め、欧米・アジアに12の拠点を持つグローバル企業へと成長している。「例えば米国の軍隊や警察が公式採用しているナイフ、パリコレで活躍するデザイナーが愛用するハサミも貝印製。ただこれらの実績は、社員の間でもあまり知られていません。実はグローバルで社会に広く貢献している、と客観的に認識してもらう機会が必要でした」と郷司氏は説明する。

さらに『FACT magazine』の発行を後押ししたのは2014年12月、遠藤宏治社長が出演したテレビ番組『カンブリア宮殿』だった。多くの社員がメディアで報じられる内容を通じて、海外展開の現状を知り驚いたという。そこで郷司氏が制作にあたり掲げた方針が「100年企業のプライドの再認識」。社内コミュニケーション強化のためのツールを制作しようと動き出した。

もう一つ注目すべきが、あえて印刷媒体にこだわっている点だ。実際に手に取ってみて分かる、質感やデザインへのこだわりから「ものづくり」と向き合う企業姿勢を感じてほしいとの思いが込められている。当初は社内のみの展開を想定していたが、現在は会社案内に代わるツールとして新卒向けの採用説明会でも配布。取引先や、貝印製品を愛用する飲食店やレストランなどにも配布場所は広がっている。

「社員はもちろん、取引先からもとても評判がいいんです。毎号、面白い企画が満載ですねとお褒めの言葉をいただき、社長も喜んでいます。営業先で話題になるので、ファクトマガジンを持って営業に行きたいという声も多いですね」。

企業に「編集部」が求められる

img06

img05

社員の技術や人柄が見える「People in the factory」 
各号のテーマとなる拠点の工場を訪れるシリーズ。ハノイ郊外のタンロン工業団地にあるカミソリの製造現場からは、職人としてのこだわりや人柄が伝わる。社員食堂の名物メニューも登場。

各拠点で働く社員の姿だけではなく、各地でものづくりに携わるクリエイターや街の風景、歴史、文化なども積極的に取り上げてきた。それは「企業は地域に根ざして愛されてこそ、持続し成長できる」という考えがあってのこと ...

あと42%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

PRになぜクリエイティブが必要かの記事一覧

PRになぜクリエイティブが必要かの記事一覧をみる

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する