もっと左脳でストーリー開発を! ファクトづくりこそPRパーソンの得意技
ファクトをベースとしたストーリー開発こそ、PRパーソンの得意技─。「世の中の合意形成をする」という広報の仕事におけるクリエイティビティとは?
PRになぜクリエイティブが必要か
近年、霞が関発の情報発信に変化が生まれ始めている。そのひとつが、国土交通省が4月から本格的に始めた動画チャンネルだ。同省が元々保有するニッチなコンテンツを有効活用する取り組みとは。
ダムにまつわる様々な写真を公開する「ダムコレクション」。既存のダムファンだけではなく、ライダーなどにも好評だそうだ。
国土交通省は4月から、SNSや動画を活用した広報力強化に取り組んでいる。同省が所管する道路や河川、運輸、観光政策などに関する映像をコンテンツ化し、ホームページ上の「国交省政策チャンネル」で公開。YouTubeやTwitterとも連動させ、話題化を狙う。これまで熊本地震からの道路復旧状況や、羽田空港のこれからの役割などを公開し、アクセスも上々だという。
国交省では2012年から広報を統括する大臣官房の広報課とは別に各局で広報担当者を配置するなど、体制の強化を図ってきた。新たにデジタルを活用した広報戦略に着手した背景について、「SNSが広く浸透したことで、国民の政策情報へのアプローチ方法が多様化してきたため」と広報課長の須藤明夫氏は語る。
「情報源が増えたからこそ、従来のように一方的な発信だけでは政策への共感は得られません。そこで視覚に訴えることで、より分かりやすく政策を理解してもらい、協力してもらえるような土壌をつくりたいと考えたのがきっかけです」。
「国交省政策チャンネル」の動画は省内で資料用に撮影していた資産を有効活用している。例えば、熊本地震の被災地をドローンで撮影した動画は、元々は被害状況を把握するために撮影した映像を再編集したものだ。
コンテンツ編集はすべて内製している。指南役は、電通から官民人事交流で派遣されている広報戦略企画官の落合直樹氏だ。「外から見ると省内にはコンテンツが豊富にあると感じました。国交省の政策は国民の関心が高く、ネタには事欠きません」。
実際、熊本地震直後に国交省の緊急災害対策派遣隊(テックフォース)が現場に駆けつけ、いち早く道路を修復した画像には「すごい!」といった称賛コメントとともに5000近いリツイートがあった。
「ソーシャルリスニングの結果、ビフォー・アフターが比較できる画像に対するネット上の反響が大きいと分かりました。積極的にSNSで発信していくうちに『こんなネタに共感が集まるのか』という気づきにもなり、職員の自信にもつながっていると思います」と須藤氏は明かす。
さらに国交省のファンを増やすためのコンテンツ制作にも乗り出す。そのひとつがダムの放流写真や周辺の風景など、ダムにまつわる様々な写真を公開する「ダムコレクション」だ。公式サイトの一角にオープンしたこのサイトは、いわゆる「ダムマニア」と呼ばれる層から密かな話題を呼んでいる。「以前は『ダム=無駄な公共事業』といったネガティブなイメージを持たれがちでした。最近はツーリングの傍らにある風景としてダムを楽しむ人も増えています」といい、親しみながら徐々にダムの役割について理解してもらいたいと考える。
今後は「SNSを通じて、国民からの声を受け止める『広聴』の役割も果たせれば」と語る須藤氏。いわば霞が関発の「コンテンツマーケティング」が始まっている。
国土交通省の「国交省政策チャンネル」。所管する道路や河川、運輸、観光政策などに関する映像をコンテンツ化し、発信している。
http://www.mlit.go.jp/river/damc/