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次世代メディアのキーパーソンたち

次世代メディアのキーパーソンに聞く「これからのニュースの伝え方」

古田大輔×竹下隆一郎×後藤直義

スマートフォンやSNSの普及に伴い、激変するメディア環境をどう生き抜くか。また広報に求められる視点とは。キーパーソンたちに聞きます。

BuzzFeed Japan 創刊編集長 古田大輔(右)
ハフィントンポスト日本版 編集長 竹下隆一郎(中央)
NewsPicks 企業・産業チーム 記者 後藤直義(左)

ネットはまだ“夜の世界”

──いま注目のインターネットメディアに入社し、活躍中のお三方に集まっていただきました。新聞記者や経済誌記者出身で、皆さん30代ということも共通点です。人々の情報接触の仕方の変化に合わせてニュースやスクープのあり方はどう変わるのでしょうか。

古田:BuzzFeed Japan(バズフィード)はニュースからエンターテインメントまで、あらゆる分野を扱います。バズフィードの理念は、「ポジティブなインパクトを世の中に与える」こと。エンタメであれば、面白いものや人を感動させるストーリーでポジティブなインパクトを与えられます。また、世の中に知られていないことを知らしめることや、他のメディアがすでに報じている情報は書かないことも意識しています。

竹下:ハフィントンポストは特に国際的なニュースを意識して、迅速な報道を心がけています。イギリスのEU離脱やアメリカの大統領選に関しても、ニュースの量は大手メディアに負けていません。切り口として、少数意見や個人の声を大事にするようにしています。

例えば、アメリカのオバマ大統領が広島を訪問したとき、ハフィントンポストはあえて記者を派遣しませんでした。その代わり、「人の心がどう動いたか」を捉えようと、SNSを駆使してある人物にインタビューをしました。それが「祖父は原爆投下機に乗っていた。アリ・ビーザーさんが、広島から被爆者の声を届ける意味」という記事。彼は原爆を落とした飛行機に乗っていた人物のお孫さんで、広島に来ていたのです。もちろんオバマ大統領や安倍首相が語った言葉や国際情勢への影響も大事ですが、個人としてどう思うのかを重視したということです。

後藤:私たちNewsPicks(ニューズピックス)は経済メディアですが、よく“意識高い系”と言われています(笑)。自意識過剰で、やたらとシリコンバレーなどに憧れを持っている人々が集まっていると。実際、私自身も入社する前は“意識高い系”のメディアだと思っていました。

一同:(笑)。

後藤:いま私たちが挑戦しようとしていることに、東海岸と西海岸の融合ということがあります。アメリカでは西海岸にIT企業が集まるシリコンバレーがあり、ニューヨークやワシントンのある東海岸には、伝統的な企業が集まっています。東京の中でも同様の見方ができます。西海岸に当たる渋谷周辺には、サイバーエージェントやディー・エヌ・エー(DeNA)といったIT系の新興企業が集まっています。一方で、東海岸の丸の内や大手町には金融街があったり、日本の伝統的な大企業が多い。ニューズピックスはいわゆる西海岸の企業ですが、東海岸にある大企業への取材アプローチを、一気に拡大しようとしているところです。

竹下:ハフィントンポストでも、東海岸ではないですが“昼の世界”に突っ込んでいこうと思っているところです。やはりインターネットは、まだ夜の世界だと。そして、昼の世界で意思決定をしているのが、霞が関や永田町、丸の内。そこに切り込んでいく第一弾として、最近は「#YoungVoice」と呼ばれる政治家取材に力を入れています。とは言え、新聞記者時代の「記者クラブ」に代表されるような今までのコミュニティとは勝手が違います。取材交渉する段階から、結構な苦労があったりします。バズフィードさんもおそらくそうですよね。

古田:大きな新聞社や雑誌社であれば、会社や媒体の名前を言えば通じたわけです。僕らの取材の第一歩としてよくあるのが、電話をかけて「インターネットのニュースサイト、バズフィードと言います」と話すと、相手から「はあ?」という反応を受けること。そこから、「バ・ズ・フィ・ー・ドと申します」と、繰り返すところから始めないといけません。

後藤:かなり言われますか?

古田:もう毎回ですね。ただ、僕がバズフィードの日本版編集長になり、最初の研修としてニューヨークに行ったとき、US版の編集長から「俺は1年間それをやった」と言われました。彼も2012年に、アメリカの政治メディアから引き抜かれたわけです。「お前もこれから1年間やらないといけないよ」とも。

後藤:私も電話すると聞き返されることが多いですね。

良い記事は話題を提供する

竹下:ライフスタイルに関するテーマも大事にしています。現在はライフスタイルの激変期で、特に職場がそのありように大きな影響を与えています。そこを上手く捉えることによって、日本が今まで抱えてきた問題を、逆照射したいとも思っています。それで、「#飲み会やめる そしたら、人生変わる気がする」という記事を書いてみました。

後藤:記事を見て、飲み会が嫌いなのかと思いましたよ。

竹下:飲むこと自体は好きですが(笑)。一方で、好きとはいえ仕事の延長になってしまうと居心地の悪さも感じていました。以前の職場では、飲み会で物事が決まってしまうことや、上司とパイプをつくって社内政治を始めるところを見たこともあります。それに、同僚には子育てをしているシングルマザーの女性もいました。彼女の働き方を見ていると、18時ちょうどに帰らないといけない。飲み会に参加できない人もいる中で、物事が決まる現状はフェアではない。問題提起をしたいという思いがありました。

古田:反響はどうでしたか。

竹下:様々な反応がありましたね。「飲み会がすごく嫌だった」と賛同するものから、「日本の会社は同質性が高く、仕事が終わった後も上司とのやり取りが続く」というような、問題点が浮き彫りになったりもしました。現代では、職場でライフスタイルの変化が起きているのに、まだ大手メディアが捉えきれていないところがあるのではないかと思います。

古田:バズフィードで話題になった記事に、「【黒歴史】昔のガラケーを持ち寄って『せーの』で電源を入れたら即死した」というものがあります。昔使っていた携帯電話を今でも保管している人は多いですよね。そのガラケーをみんなで見返してみたら、中に自分たちの黒歴史が詰まっていたという記事です。すると、自分もやってみたという読者の方も多く、「やっぱり死んだ」という人たちが続出しました。やはり共感を呼ぶ記事は …

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