目指すは時価総額1兆円企業 日清食品HDの「株価連動型社食」誕生の理由
株価とメニューが連動し、業績が上がれば豪華、下がれば質素に変化する─。そんな日本初の社員食堂を3月末にオープンしたのが日清食品ホールディングスだ。ユニークな取り組みの背景には、高い目標を掲げる中期経営計画があった。
「戦略的社内広報」で社員が変わり、会社が変わる。
「自ら考え、行動できる人材を育てたい」というトップの考えを浸透させるため、電子材料メーカーの太陽ホールディングスが取り組んだのは社員食堂や作業服のリニューアル、「レクリエーション制度」の創設だ。
東京・練馬に本社を構える太陽ホールディングス(HD)は、化学系の電子材料メーカーだ。「ソルダーレジスト」と呼ばれる、スマートフォンやタブレット内の基板に使用される材料では、世界シェア約6割を誇る。
1953年、印刷用インキの製造販売業として創業。伝統的なBtoB企業にはとかくありがちだが、これまで広報や情報発信の重要性は認識されていなかった。良いものをつくれば売れる、会社の良さは分かる人だけ分かってくれればよい─。かつて社内にはそんな考えすら存在したという。
しかし、2001年に東証一部に上場。アジア圏を中心にM&Aにも乗り出し、グループ社員は1000人を超えるまでに拡大。市場も成熟し強豪も参入する中、今まで通りに右肩上がりの成長が続くとは限らないと感じ始めた。
「企業としての推進力を高め、社員のモチベーションも強化したいと、2012年から広報活動に取り組んでいます。当社は社員の9割が男性ですが、広報担当の3人は私以外が全員女性。女性ならではのコミュニケーション力にも期待しています」と人事総務部長の荒神文彦氏は語る。
リニューアルした食堂は取引先からも好評。打ち合わせに訪れてもらえる回数も増えた。メニューは近隣の嵐山町、小川町を中心とした埼玉県産で「地産地消」を意識している。
人材育成の核となるのは、佐藤英志社長のある考え方。「環境に甘んじるのではなく、自ら自由に考え、学び、育つことのできる『自律型人材』を目指すべき」というものだ。思いついたアイデアはどんなものでも実現していい─。そんな考えを、トップ自ら社員に示したのが、社員食堂のリニューアルだった。
2014年夏、埼玉・嵐山事業所の社員食堂が生まれ変わった。赤坂の料亭から料理人を招き、地元食材にこだわった料理をバイキング形式で提供している。しかも1食分の料金は400円と格安だ。「毎日バラエティーに富んだ食事を摂ることによって発想力が育まれる、という社長の狙いがありました。もちろん中には食堂を利用しない人や、利用しても同じような食事ばかり摂ったり ...