外国人観光客を地方に誘客する際の課題が、多言語による情報発信だ。フォントメーカーのモリサワは、低コストの多言語情報発信ツールを開発、自治体などに多く導入されている。
モリサワの多言語対応の情報発信ツール「MCCatalog+」は、紙情報を6言語に自動翻訳し、タブレットやスマートフォンに配信できる。
訪日外国人の誘客に必要なのは、その地域が持つ魅力を外国人に対して知らせること。多くの自治体は日本語のパンフレットを発行しているが、それを多言語に翻訳し、印刷・配布するのは莫大なコストと時間がかかるとして、ごく一部の主要な情報だけが多言語化されているのが現状だ。
「これは大きな機会損失です。リピーターの外国人観光客が増え、ガイドブックに載っている場所だけではなく地元の人しか知らないスポットに行きたいというニーズが高まっている。にもかかわらず、肝心な情報が知られていないのです」と話すのは、モリサワ コンテンツプロモーション課係長の小野大輔氏だ。
多言語での情報発信を安価で実現するツールに市場性を感じ、モリサワが2015年2月にリリースしたのが「MCCatalog+」というツール。観光ガイド、広報誌、フリーペーパーなどの地域情報誌、レストランのメニュー、施設案内などの紙の情報を日本語、英語、中国語簡体字、中国語繁体字、韓国語、タイ語の6言語に自動翻訳し、タブレットやスマートフォンにデジタルブックとして配信する。多言語自動音声読み上げや動画の埋め込みなどの機能も備えている。紙のパンフレットを作成する場合と「MCCatalog+」を導入し、多言語デジタルブック形式で配信した場合を比較すると、コストは4分の1以下になる。
当初は地方自治体や観光協会をターゲットに想定していたが、ローカルな情報の発信目的で地域情報誌による利用も増えている。「どの言語で読まれているのか」「どこで読まれているのか」といったログを見ることができるので、そのデータを分析して次の策を講じることもできる点も好調の理由だ。例えば中国語がよく読まれているなら、中国語だけ紙の冊子をつくる。関西空港でよく読まれているなら、関空でプロモーションをかける、といった具合だ。
インバウンドの誘客を狙う地域にとって、今後、多言語でのデジタル情報発信は必須のマーケティングツールになっていくだろう。
モリサワの多言語対応の情報発信ツール「MCCatalog+」は、紙情報を6言語に自動翻訳し、タブレットやスマートフォンに配信できる。
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