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青山広報会議

西武ホールディングス、丸紅の広報担当役員が対談 社員の働く意欲を高める方法とは

西武ホールディングス、丸紅

大企業では規模の拡大とともに、グループ全体の社員の意識統一が課題となる。西武ホールディングス、丸紅が今、広報主導で社内コミュニケーションに力を入れる背景とは。今回は両社の広報担当役員が登壇し、その戦略と具体的な事例を交えながら語った。

※本記事は4月12日・13日に宣伝会議主催のイベント「AdverTimes DAYS 2016」内で行われた講演をレポートしたものです。

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グローバル企業の広報体制

編集部:本日は、西武ホールディングス、丸紅でそれぞれ広報部長を務めていらっしゃるお立場から、具体的な事例を交えながらお話をいただきたいと思います。

西山:西武グループは西武鉄道、プリンスホテル、西武バス、西武プロパティーズなど8社を軸とし、54社で構成されています。現在の体制に移行したのは2006年3月のこと。2004年12月に西武鉄道が有価証券報告書虚偽記載で上場廃止となり、2005年2月に後藤高志が西武鉄道特別顧問として西武に入り、5月に同社社長に就任。再建へ向けて本格始動しました。翌2006年2月に西武ホールディングスを設立し、後藤が社長となり、持株会社主導によるグループ一体再生に取り組みました。

現在の社員数は約2万2000人。新体制になり、西武ホールディングスに広報部が設置されました。16人体制で業務にあたっています。インナーコミュニケーションについては、事業所間や部署間のシナジー効果を出せるように横の交流を活性化させる施策を打っています。

編集部:『広報会議』本誌のトップインタビューで後藤社長に取材をさせていただいたとき、過去最高益の達成にあたっては広報の力の後押しもあったというお話も印象的でした。では続いて、丸紅の組織・体制についてのご紹介をお願いします。

島﨑:丸紅は1858年5月創業、現在は67カ国132の地域で事業を展開しています。社員は単体で約4500人、内844人が海外駐在しており、グループ全体での社員数は約4万人です。

商社のビジネスは多岐にわたります。現在は生活産業、素材、エネルギー・金属、電力・プラント、輸送機の5グループ18本部体制で、生活を支える食糧・食品の輸入・販売、スーパーマーケット事業、国内外でのマンション分譲から、発電所や上下水道をはじめとするインフラの建設と運営、エネルギー資源への投資・輸入、輸送機械の取り扱いなど、非常に幅広い事業を全世界で展開中です。こうした多種多様な事業会社を束ねる丸紅グループの広報活動を行っているのが、広報部です。

全従業員が広報パーソンに

編集部:具体的には、広報部門でどのような社内向けの施策に取り組まれているのでしょうか。

西山:経営再建にあたり、2006年3月のグループ再編の完了と同時に新たにグループビジョン(経営理念)を制定しました。当時の西武はカリスマオーナーが退いてしまい、かつ前年には企業としての信用不安が社会に広がったこともあり、役職員の心の中でのグループの存在意義やアイデンティティが揺らぎ、社員の気持ちをひとつにまとめる新たなビジョンが必要だったのです。ビジョンの策定にあたっては、グループ社員へのアンケートなどを経てまとめました。その結果、「でかける人を、ほほえむ人へ。」というスローガンを掲げ、以来、全グループ社員は誠実で協調性があり、自ら考えチャレンジするなど、企業のあるべき姿や求められる姿勢を目指し、日々の業務を遂行しています。

広報部が任されたのは、そのグループビジョンをグループ内に浸透させ、社員の行動に結びつけるきっかけをつくること。2006年以来、ビジョン浸透を推進する専任担当者を配置し「ビジョンブック」を作成するなど、様々な施策を展開しました。ビジョンブックは社長の後藤をはじめ、すべての社員が携帯しており、判断に迷った際にも読み返すもの、としています。

島﨑:丸紅の事業は多様ですがBtoBが大半なので、テレビや新聞に出稿する広告はどうしても漠然としたイメージ主体のものになってしまいがちです。当社の魅力を伝えたいとき、私たちにとっての一番の広告塔は日々取引先やお客さまに接している社員。そこで、力を入れているのがインナーコミュニケーションです。社員一人ひとりが「自分は丸紅の広報パーソンである」という自覚のもと、普段の業務を通じて広報活動が展開されるのが理想であり、そのためにその意識とモチベーションの向上を図っています。

広報部は「企画・ブランド推進課」「報道課」「CSR・地球環境室」の3つの組織に分かれています。企画・ブランド推進課では、HP、グループ社内報の制作やロゴ管理のほか、広告制作も担当しています。広告活動は「ミラー効果」により社員のやる気や士気高揚を促す効果があるという考えのもと、行っています。

社内媒体による社員への情報発信では、発信した情報が社員を通して社外に伝わっていくことも想定しています。また広聴機能として、社内アンケートにより社員の声を集約したり、社外データを収集して外部評価を分析した情報を社内で共有しています。

    ツール制作やブログ更新で新社長と社員の気持ちをひとつに

    事業会社の壁を越えることが気持ち・達成感を共有するのに一番効果的だと実感した 西山氏

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    2006年3月のグループ再編の完了と同時に新たにグループビジョンを制定し、広報部は「ビジョンブック」を作成した。

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    グループ報『ism(イズム)』とイントラネットの「webism」。「web-ism」には後藤高志社長が日常の中で感じたことを発信する「社長のきもち」と題したブログも。

「グループ報」発行の目的とは

編集部:ここからは社内媒体について、詳しくお話をうかがっていければと思います。社員に読んでもらう企画や工夫、実践しているアイデアなど、教えていただけますか。

島﨑:国内の丸紅グループ社員を対象に社内誌『M-SPIRIT』を約2万1000部発行しています。ウェブ版の社内報「MS+」も随時更新しており、毎月の訪問数は2万2000人。メールマガジンも月に3~4回発行しています。紙の社内誌は季刊なので、インタビューや事業紹介などじっくり読んでもらいたい記事を中心とし、ニュースなどはウェブの社内報やメルマガでタイムリーに展開。海外や取引先に向けてFacebookやYouTubeも活用しています。

西山:西武ホールディングスでは、隔月でグループ報『ism(イズム)』を発行しています。一部の事業会社にも社内報はありますが、グループ報ではグループビジョンを前提とした「西武イズム」を浸透させて醸成するために、各社でのグループビジョン実践の具体的事例を紹介しています。

また、イントラネットでは「web-ism」という名称で展開し、随時更新しています。なかでもトップの考えを理解してもらおうと、後藤が日常の中で感じたことを「社長のきもち」と題したブログにより10年以上発信し続けており、経営トップと社員のコミュニケーションツールとして掲載しています。

編集部:更新頻度と社員からの反響はいかがですか。

西山:不定期ですが月4回ぐらい更新していまして、後藤が各地の事業所を訪問した際にブログが話題になることも多いようです。かつての経営者は「雲の上の存在」でしたが、新体制では身近で親しみも感じてほしいという狙いもありました。例えば地方出張の様子やプライベートな出来事などを気軽にどんどんブログにアップすることで距離感を徹底的に縮め、かつ経営者の考えを直接伝える手段のひとつとしても機能しています。

編集部:トップが月4回もブログを更新するのはすごいですね。トップがそこまでコミットするというのは非常に珍しいと思います。

西山:継続が大切、と本人は言っています。

島﨑:丸紅では最近、ウェブ上での動画活用に力を入れるようになりました。例えば海外事業会社の社長による来日講演や、プロジェクトの現場などをウェブ版社内報にアップしています。最近の事例では、3月に実施した電力小売事業参入発表記者会見の様子をアップしました。スタジオジブリと組んだ新料金プランで、料金の一部はジブリが支援する森林の保全を行う活動に使われるという内容です。

動画は情報量が多く分かりやすいうえ、臨場感を味わってもらうことができますので、今後もどんどん活用していきたいと思います。ちなみに撮影は広報部員がカメラを抱えて行くこともありますが、取材内容に応じてプロカメラマンに依頼することもあります。

編集部:会場でも皆さんに実際の動画、ウェブ版社内報を見ていただきましたが、動画のクオリティが非常に高い点が印象的でした。企画を進める上でのポイント、こだわっている点などあれば教えていただけますか。

島﨑:社内報の制作で徹底している点は、できるだけ多くの社員が登場する誌面づくりです。国内外の事業会社紹介や社員インタビュー記事はもちろん、社内の相互会活動や社員からの投稿など、幅広い内容を掲載しています。広報部による突撃取材ということで、会社の入り口で社員に今年の抱負を聞くインタビュー企画なども実施しているのですが、やはり自分自身や身近な人が社内報に出ていると見てみようという気持ちになりますから、とにかく社員を一人でも多く出しています。

2015年は営業部長72人全員の若いころの体験談や、意気込みなどを紹介する新たな試みとして冊子を制作。部長の人となりが今まで以上に分かったと好評でした。また、毎年一番人気のコンテンツは新入社員紹介で、ウェブにアップすると同時にアクセスが集中し、つながりにくくなるほどです。

西山:西武ホールディングスの場合、インナーコミュニケーション活動には3つの狙いがあると考えています。
(1)社員にチャレンジ意欲とボトムアップマインドを定着させる
(2)経営との距離感を徹底的に短縮させる
(3)各社、各事業所の交流を図り協力体制を構築する。
この3つを主眼に置いたうえでグループスローガンを踏まえ、「スマイル」をテーマにした施策を行っています。

例えば、2006年から10回開催している「チームほほえみ賞・大賞」。グループの各職場からグループビジョンに基づく取り組み事例を募集するアワードで、まず、各社での審査により受賞を決め、各社社長による表彰を行います。その後、各社における受賞者は全国の事業所から集まり、西武グループとしての大賞を決定するための選考会に参加。西武グループ各社の経営陣の前で取り組み事例のプレゼンを行い、投票によって大賞が決定します。これはお互いの取り組みを知り交流を深める場としても機能しており、これまでにのべ1220人が参加しました。今後も息長く続けていきたいです。

    動画の活用や多くの社員紹介で多岐にわたる事業をつなぐ

    インナーコミュニケーションにウェブサイトの充実は不可欠。地道な社内取材も必要 島﨑氏

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    社内誌『M-SPIRIT』とウェブ版の社内報「MS+」を発行。「MS+」では動画活用に力を入れており、海外事業会社の社長の来日講演などを公開している。

社内理解を深めるポイント

編集部:インナーコミュニケーションの施策は成果が見えにくかったり、効果が出るまでに時間がかかったりしますが、重要性を社内でどのように説明し、理解を得ていますか。

西山:ここ10年間は、地域や業種を越えたインナーコミュニケーションによって横のつながりを強化し、気持ちを共有しようと努めてきました。特に心がけていることは、広報部だけで実現できると思わずに様々な部門と協力することです。

それを実感した事例が、2015年3月の西武ホールディングスと西武鉄道による台湾の鉄道会社との友好協定の締結。海を越えたスタンプラリーも実現しました。協定締結のきっかけとなったのは、西武鉄道の若手女性社員の発案と行動力です。そして国内企業の西武鉄道がこれを西武ホールディングスとともに実現させることができたのは、プリンスホテルの台北支店や、昔から台湾と親交がある西武ライオンズといった、業種を越えたグループ会社の協力があったからです。この経験により、インナーコミュニケーションにあたって気持ち、達成感を共有するには、事業会社の壁を越えて一緒に仕事をすることが一番効果的だと改めて実感しました。

島﨑:インナーコミュニケーションを推進するには経営陣の理解が必要ですが、経営陣の顔色を見すぎてはダメだと思います。広報は「そこまでやるの?」と言われるほどやることもときには必要ではないでしょうか。また、どれだけ社員を巻き込むことができるか。そこが課題です。

西山:一番効果があるのは事業会社の壁を越えて社員が一緒に仕事をすること、と申しましたが、担当業務の性質により、そういった機会がない社員はまだたくさんいます。広報はそうした社員に他の事業会社と交流できるような機会を提供して、サポートして補完していく役割があると思っています。これからは地方にもどんどん足を運んで、地道に息長くインナー広報の活動を続けていきたいと思います。

島﨑:同感ですね。丸紅でいえば単体・事業会社合わせて約4万人の社員に、丸紅グループ社員としての強い意識や誇りを持ってもらうために、広報活動は非常に重要な役割を担っています。特にこれからの時代、SNSの活用やウェブサイトの充実が求められると思っていますので、コンテンツづくりのために事業会社を訪問して取材するなど、地道な作業が必要です。そうした活動を今後もコツコツと積み重ねていこうと思っています。

約4万人の社員を会社の広報パーソンに

丸紅 執行役員 秘書部長 兼 広報部長 島﨑 豊氏(しまざき・ゆたか)

1982年入社後、海外におけるインフラ建設・事業活動に従事し、特に上下水道などの水ビジネスを推進。その後、秘書部、営業部課長を経て2008年広報部副部長、2011年秘書部長。2015年から秘書部長 兼 広報部長、2016年から現職。

社内の交流を活性化 グループビジョンの浸透へ

西武ホールディングス 取締役 上席執行役員 広報部長 西山隆一郎氏

1987年、第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行。2009年西武ホールディングス入社、2013年執行役員広報部長。2014年から現職。西武鉄道 取締役 上席執行役員 広報部長を兼務。

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