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REPORT

エンブレム騒動を教訓に 広報が知っておくべき知財権の知識

平野泰弘(弁理士/ファーイースト国際特許事務所 所長)

2020年東京五輪の公式エンブレムをめぐる今回の騒動は、デザイン界や商標に関わる人に大きな教訓を残した。事業者やその広報担当者は何を学ぶべきか。最低限知っておきたい商標や著作権の知識とは。

「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」は、経済産業省所管の独立行政法人工業所有権情報・研修館が運営する。特許、実用新案、意匠、商標、審決の公報、外国公報、非特許文献、審査経過情報など、知財戦略に必要となる基本的な情報を検索することができる。

日本国民の注目の的となった公式エンブレムの撤回をめぐる問題は、デザイン業界、そしてデザインを委託する側の双方にとって課題を残しました。日本の知財権をめぐる環境が大きく変わったことを実感する機会にもなりました。

ポイントの一つは、組織委員会が採用を決めたデザインについて、権利をきちんと取得する前に発表してしまったことです。2015年7月に採用の発表をした時点では商標登録の申請はしていたものの、登録はされていませんでした。第三者機関に審査され、登録が完了する以前に発表した結果、多くの問題点を指摘されました。組織委員会でもある程度の調査はしたでしょうが、その後の経緯を見る限り、問題となりそうな点を洗いださないままにオープンにしてしまった感があります。

「見切り発車」は危険

これには難しい側面もあります。仮に日本国内や世界各国の権利商標をすべて申請し、取得した後に発表すれば、日本では「密室会議による決定」との非難を受けることになったでしょう。今回のいきさつでさえ「はじめから結論ありき、出来レースだった」─の声が上がる恐れがあるわけです。

結果論を言えば、今回採用を取りやめたエンブレムは、あまりにシンプル過ぎたのかもしれません。シンプルであればあるほど「似ている」とか「盗作ではないか」といった見方をされる可能性が高くなります。仕切り直しで選ばれた市松模様をあしらったデザインは非常に手の込んだものです。こうした複雑なデザインであれば、丸ごとすべて似ているなどと指摘されるケースはほとんどありません。

今回は特にオリンピックという国家的行事を象徴するエンブレムでした。その意味ではまず権利関係をガッチリと固めることが優先されるべきでした。その過程で問題点は必ず浮き出てくるものです。一つのデザインに仮決めするにしても …

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