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地域活性のプロが指南

「田んぼアート」による観光地づくり 失敗を乗り越え、見学者数増加と有料化の決断へ

鈴木 勝(地方公務員・田舎館村 企画観光課長補佐)

今回は、青森県・田舎館(いなかだて)村が「田んぼアート」の技術を確立させ、観光施設としての仕組みを整えるまでを紹介します。

2003年の「モナ・リザ」(上)と2004年の「羅睺羅の柵と山神妃の柵」(下)。「モナ・リザ」で失敗した経験により、遠近法でゆがみを付ける技術が向上した。

前回(参照記事)は「田んぼアート」について、1993年のスタートから紆余曲折がありながらも10回目を開催するまでの流れを駆け足で振り返りました。今回は転機となった11回目での失敗、そして挽回までの道のりについてお話ししていきたいと思います。

1993年に始まった「稲作体験ツアー」も、11回目を迎えたころから「田んぼアート」と呼ばれるようになり、ここから新たな挑戦が始まります。せっかくアートと呼べる作品をつくれるようになったのだから、まさにアート作品をつくろうと11回目(2003年)は世界の名画「モナ・リザ」に挑戦しました。面積こそ前年より小さくしたものの、たった3色の稲で表現することができるのか半信半疑ではありましたが、地元養護学校の美術教諭であった山本篤氏に3色でモナ・リザを表現してもらいました。さらに、トータルステーションという機械を使った測量技術を活用した下描きにも挑戦しました。

しかし、写真を見て分かるように、ずいぶんと下太りしたモナ・リザになってしまいました。これは、原図を真上から見た場合にはきれいなモナ・リザに見えますが、斜め上から俯瞰して見た場合、「遠近法」を取り入れて下絵を描かないと近くは大きく、遠くは小さくなってしまうからなのです。これによって10年間、苦労しつつも成功させてきたこのイベントも、11回目にして「失敗」のレッテルを貼られてしまうことに……。後に、この失敗が今後の大きな躍進への糧となります。

精度向上と報道機会の増加

モナ・リザの失敗により、山本氏が本領を発揮します。2004年には青森県出身で世界的にも有名な版画家・棟方志功氏の作品「羅睺羅(らごら)の柵と山神妃(やまのかみひ)の柵」に挑戦しました。モナ・リザと比べて数倍の細かさと、さらに遠近法をかけるというこれまでからは想像もつかない作品。ましてや面積はモナ・リザの4倍以上です。当時の役場内は「本当に稲で表現できるのか」と、かなりざわついていました。

しかし、山本氏はきっちり3色でこの作品をつくり上げ、さらに遠近法でゆがみを付けました。それをもとに、役場の土木担当が手作業で田んぼに下絵を描くための設計図を作成。こうして完成した作品は、見事に棟方志功氏の作品を表現したのです。

これにより確立した田んぼアート制作技術は年々精度を上げていきます。2005年「東洲斎写楽と喜多川歌麿」、2006年「風神雷神図」と、浮世絵や屏風画など ...

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