オープンやリニューアルが相次ぐ企業ミュージアムやショールーム。そのメディアパワーを検証します。
三菱電機イベントスクエア「METoA Ginza」
2016年3月31日、三菱電機グループの技術・サービスに気軽に触れられる施設として同日オープンの大型商業ビル「東急プラザ銀座」1階から3階スペース一部に誕生。2~3階のイベント・ギャラリースペースでは「見て」「触れて」の体感型イベントを定期開催する。1階のカフェレストランとも連動して、銀座を訪れる幅広い層の消費者の三菱電機に対する興味を喚起することが狙い。
花や東京の夜景を映し出す「METoA VISION」は、ごくそばに寄って観ても被写体の美しさが生き生きと感じ取れる4K液晶画面の特質を活かす。家族連れなど幅広い消費者層に訴求する。
企業のショールームといえば、新商品がずらりと並んでいる光景がおなじみである。ところが「METoAGinza」には、それらしき展示はない。「商品を売るためではなく当社の技術力に触れていただくイベントスペースだからです」と三菱電機 宣伝部グループマネージャーの宮崎泰宏氏は語る。
銀座の一等地で企業メッセージを発信するにあたり、あえて商品を並べない。その決断までには、当然ながら社内で議論があったが「最終的に社会を支える電機メーカーとしての認知を高めるには、技術力を楽しく伝えることが一番という結論に達しました」と宮崎氏は述懐する。
施設の目玉は全64面液晶マルチディスプレイの4 K大型映像システム「METoA VISION」。独自設計で、横幅は19.4メートルもある。このほか、画面に向かい手を振るとディスプレイ内の花びらが呼応して動くデジタルサイネージなども導入し、イベントスペースが完成した。春のオープン時期にはフラワーアーティストとクリエイターによる映像が連日映し出されていた。「今後、宇宙をはじめ他事業の技術をどのように楽しく見せられるかが課題」と「METoA Ginza」支配人の今川孝二氏は力を込める。賑わう街の中枢に常設スペースを持つということは、通りすがりの人々にも広く親しんでもらわなければならない。BtoBの展示会とはわけが違う。そのハードルは高いが挑戦しがいもあり、「訪れるたびに立ち寄り、待ち合わせの名所になる」という光景が理想だろう。
オープンにあたっては、商業施設全体のプレス内覧会の開催日にあわせて、同社が独自で情報番組や雑誌を招待し、広告キャラクターの戸田恵子とオードリーのトークショーを開催。結果、『スッキリ!!』(日本テレビ)や『めざましテレビ』(フジテレビ)などでも紹介された。加えて、同日夜に開催されたレセプションでは、メディアや影響力ある個人など200人を超える参加があった。一歩進んだ技術を分かりやすく伝え、いかに話題化していくか。技術を競争力としていきたい会社にとっては共通の課題だろう。
デジタルサイネージは訪日観光客にも人気。
タレントのトークショーで情報番組露出にもなった。
取材・文/矢吹博志
やぶき・ひろしPR会社出身。マジックをPRに生かすオフィスパーソナル代表。『夕刊フジ』で「魅惑のショールーム探訪」連載中。 |