いま、広報担当者にマーケティングの視点が求められています。今回は、日々の活動の目標設定や効果測定の手法を解説していきます。
前回はPR活動において、PDCA(Plan・Do・Check・Action)のサイクルを回していくことの大切さについて、詳しく書かせてもらった。
企業や組織におけるPR活動の重要性を周囲により理解してもらうためにも、PR部門の活動は、担当者の単なる「思いつき」だったり、行き当たりばったりの「やったらやりっぱなし」ではいけない。まずはしっかりと自分たちの目標を定める。次にプランを企画、実施する。そして成果の分析を行い次のPR活動へとつなげていく。以上はPR活動を持続的に企業・組織内で進めていくために最低限必要なことだ。
ところが、上記のようなことを企業の社長やPR部門の責任者に説明すると必ずといっていいほど聞かれることがある。それは「PRの目標をどうやって設定したらよいか?」「成果(効果)はどうすれば測定できるのか?」という問いである。
多くのPR部門が、日常業務における「目標設定」と「効果測定」を、これまで曖昧にしてきた。このため、他部門や経営幹部がPR活動に理解を示さない(広告には予算を出してもPRには予算を出さない)ことが多いと聞く。
「目標設定」「効果測定」の原則
ではどうやって「目標設定」「効果測定」を行えばよいのか。まず初めに、目標設定と効果測定の原則を確認したい。
最初に気をつけておきたいことは、メディアでの「露出結果」だけをPR活動の目標としたり、PRの成果指標として「露出量」にこだわりすぎたりすることは大きな弊害を生む危険があるということだ。効果を可能な限り測定しようとすることは重要だが、本当に大切なのは、「露出すること」ではなく、露出したのちに起こる「変化」だからだ。
PR活動の目標設定や効果測定にはよく「広告換算値」が用いられる。これを参考とする数値の一つとして換算することに異存はない。しかし「広告換算値」はあくまで露出の「量」を数値化したものだ。「PR活動の価値」そのものではない。「広告換算値」にこだわりすぎると、露出の「質」の評価がないがしろになる。その結果、露出の「質」を犠牲にしてしまったという失敗をよく耳にする。
そもそも「広告」と「PR」は、同じ面積で露出したとしても露出の持つ意味が異なる。広告は広告主の主観である。メディアによる客観記事とは顧客が感じる信頼性は異なる。広告に比べてPRでの露出は3 倍の価値を持つ、あるいは10倍の価値を持つと考える企業もある。それをまったく同じ評価基準で指標とするには無理があるのは当然だ。目標設定と効果測定においては、露出の「量と質」の双方を測定し評価することが望ましい。
大きい目標(KGI)と小さい目標(KPI)
次に目標設定について考えたい。目標設定と聞いて最初に思い浮かべるのが「KGI」「KPI」という2つの用語である。KGIは「Key Goal Indicator」の略である。日本語では「重要目標達成指標」と訳される。一方のKPIは「Key Performance Indicator」で「重要業績評価指標」と訳される。この2つはPR活動の目標設定に限らず、企画(プロジェクト)全般や経営企画などにもよく使われる。
私は東北芸術工科大学の企画構想学科で教鞭をとっている。この2つの言葉は初めて聞いた学生にとっては、間違いやすく覚えにくいので、分かりやすく説明するために「大きい目標(KGI)」「小さい目標(KPI)」とかみ砕いて呼ぶことにしている。図式化したイメージとしては図1も参考にしていただきたい。
- 最終目標が本当に達成されたかどうかを計測する指標
- 具体的な数値を決定し、いつまでに達成するのか期限を設定するのが望ましい
- 「最終目標」のことではなく、あくまで「通過地点」「今やること」を確認するための指標
- 設定したKGIに対し、どうすれば目標達成が可能となるか、その道標として過程を計測する指標
Key Goal Indicator(重要目標達成指標)
Key Performance Indicator(重要業績評価指標)
KGI(重要目標達成指標)は、最終目標が本当に達成されたかどうかを計測する指標であり、具体的な数値を決定しいつまでに達成するのか期限を設ける必要がある。
例えば「既存サービスの認知度をさらに上げる」というようなKGIは曖昧なので避けたい。もしも「既存サービスの認知度をさらに上げること」で ...