800近くある国公私立大学が受験生や資金を求めて競争する教育現場。スポーツ選手を多く輩出する東洋大学で広報を務める榊原康貴氏が、現場の課題や危機管理などの広報のポイントを解説します。
「web体験授業」の収録風景。カメラもパラレルで動かす。
新学期の喧騒が落ち着いてきたころではないでしょうか。時を同じく、受験産業では入試の動向セミナーなどが行われ、週刊誌では志願者数ランキングの特集も組まれています。そこで今回は、入学試験での志願者数と広報活動の関係について書きたいと思います。
数字から何を伝えるのか
東洋大学の2016年4月入学の一般入試志願者数は8万4886人。前年比では微増の101.6%となり、私立大学の全国入試志願者数ランキングでは7位でした。キャッチーな見出しの新聞や週刊誌では順位を強調する傾向があり、読者は志願者数よりも順位の方が印象に強く残ります。一方、受験生は競争率や志願者数の増減はとても気になるでしょう。その心理を考えると、増減率などを伝えた方が彼らにとって知りたい情報を伝えることになるかもしれません。
さて、多くの皆さんが感じられているように、数字の一人歩きは広報上の障壁になりやすいと思います。場合によってはミスリードを引き起こし、偏ったイメージが形成されてしまうかもしれません。例えばある大学で志願者数が減った場合、前年にその大学の教育・研究内容に魅力が急激に失われたということでしょうか─。おそらくそのようなことはあまりないと思います。様々な要因が重なり、その数字に結びついています。
広報と志願者数の相関関係
もちろん志願者数は、学生募集部門の血のにじむような営業努力の結果ですし、新学部の設置など …