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専門メディアの現場から

新潟・南魚沼の編集部から精神的な「上質」を発信する『自遊人』

自遊人『自遊人』

地域に根差す人に光を当てる 
地域で活躍するシェフやカフェオーナーなどのインタビュー。こんなにも地方に根差し活動する人が増えてきたのかと驚かされる。

『TOKYO★1週間』(講談社)、『東京ウォーカー』(KADOKAWA)など、数々の情報誌編集に携わってきた岩佐十良氏が、2000年に「上質な情報を上質な生活を求める人に届けたい」との思いで創刊した『自遊人』。当初は一般的な情報も扱ったが、近年はオーガニックをテーマにするライフスタイル誌として展開している。

地域・人間・食べ物のバランス

雑誌の転機は2002年。同誌で米特集を行ったことをきっかけに自社で米や有機食品の通販も手掛けるようになった。「『上質』の定義が物質的な贅沢から精神的な方向へと変わりました」と岩佐氏は語る。その結果、読者も知的な専門職や比較的高年収の読者層が増えた。その後、2006年には編集部を東京・日本橋から新潟・南魚沼に移転。「地方移住」から「再生可能エネルギー」まで幅広い情報を扱うようになった。「地域と人間と食べ物のバランスを志向した私たちの提案です」。

その方向性は、生産から処理まで考え、エコロジーや安全な食が当たり前に語られるようになった時代趨勢とマッチする。例えば、東京のシェフと地方の生産農家の協働を伝える記事では、年を経るにつれ若年層の農家が登場することが増えている。インターネットの発展で、全国各地に拠点を移し仕事をするクリエイターも増えた。その彼らを取材する中で、都市在住と「質の高い生活」が等価でなくなったことを誌面では伝えている。また、業界の第一人者と編集長が対談する「Talk about the future」からは「観光」や「地域」が日本をけん引していくであろうことも読み取れる。

試食やサンプルの用意を

岩佐氏は、誌面の編集に新製品のプレスリリースを利用することはほぼないと話す。「今はSNS上のインフルエンサーや、信頼度の高い知人からの情報が一番参考になるから」だという。

食品を取り扱う媒体ならではの視点としては、「発表会での試食やサンプルなど、実際に味わう機会が欲しいですね」と岩佐氏。さらに「最近の広報担当者は発表会で多数の記者と名刺交換することにのみ、熱心に映ります」という厳しい指摘も。SNS上でつながった広報担当者の趣味嗜好が見えるようになったため、「本当にこの商品を好きでPRしているのだろうか?」と感じることもあるそうだ。商品と向かいあう姿勢も引っくるめて、メディアは見ているということだろう。

日本の未来を示す対談ページ 
星野リゾートの星野佳路社長と岩佐氏の対談「日本の観光について」は一挙16ページで展開。「客のクレームを何でも聞くのが『おもてなし』なのか?」などについて語った。


地方移住クリエイターが増加 
ネットや光回線の普及などで東京から地方へ移住し、快適な住まいや仕事環境を得たクリエイター・会社を紹介することも多い。

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