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緊急レポート

熊本地震発生から2週間 復旧の際に必要な企業広報とは

白井邦芳(危機管理コンサルタント)

熊本・大分両県に甚大な被害をもたらした熊本地震の影響は、国内経済に広く及んでいる。生活基盤や都市機能の復旧にあたって、企業が想定すべきリスクとは。また広報はどんな対応を行うべきか。危機管理コンサルタントの白井邦芳氏が解説する。

地震の影響は国内外の経済に広がっている(写真はイメージ)。

写真提供:Shutterstock

余震の回数が過去最大に

4月14日21時26分頃、熊本県益城町で震度7を観測する地震(以後「熊本地震」)が発生、その後16日1時25分頃、マグニチュード(M)7.3、最大震度7を伴う九州地方広域で震度5弱以上の大地震(本震)が発生した。国土地理院はこの本震について「阪神・淡路大震災」の約1.4倍のエネルギーであったとの分析結果を発表。陸域が浅く(震源の深さ11㎞~12㎞)、広域(九州地方から東北地方にかけての広い範囲で震度1~7を観測)に発生した最大地震であるとともに、震度7を複数カ所に伴う初めての大地震となった。

熊本地震は、直下型の活断層地震である。活断層地震と言えば、1995年1月17日に発生し6434人の犠牲者を出した阪神・淡路大震災(M7.3、最大震度7)を思い浮かべる。断層軸のずれに伴い周辺では大きく揺れ、広域で交通インフラや建物の崩落・全半壊、火災旋風と呼ばれる地震火災で全焼地域も発生、関西地方を中心に物流やライフラインが遮断されて住民生活や企業活動の再生に多くの時間を費やした。

一方、2011年3月11日、太平洋三陸沖を震源として発生した「東日本大震災」は日本の歴史上、過去400年で最大の地震(M9.0)で、日本列島に沈み込むプレート境界地震であった。東日本大震災は、未曾有の津波を伴い、プレートに沿った震央の移動による多数の地震の脅威と日本列島の広範囲を襲う被災、多くの避難所生活者の疲弊を伴い、長期に及ぶ復興・復旧作業と経済後退を引き起こした。同時に原子力発電所などにおける災害事故が発生し、周辺地域がメルトダウンによる脅威にさらされた。この大地震では、もう一つの特徴として、震度5弱以上の揺れの継続時間の長さにある。阪神・淡路大震災が20秒(観測点:気象庁神戸)に比べ、東日本大震災は140秒(観測点:K-NET仙台)と極めて長く、この影響として広範囲で液状化現象が発生し、特に関東地方では震度5強程度の揺れでも継続時間の長さから、千葉県浦安市、我孫子市などで激しい液状化が発生、局地的な大被害となった。

熊本地震は、気象庁によれば、過去最大だった震度1以上の余震数であった2004年の「新潟県中越地震」を超え、また、M3.5以上の地震回数も過去最大のペースと発表されている。約1週間が経過した4月20日時点で、約2700軒の停電、約4万2000軒の断水、約10万5000軒のガス供給停止、通信にも影響が出ている。鉄道は回送電車の脱線、損壊100カ所以上、復旧の見通しが立っていない地域もある。航空関連はほぼ運航再開されたが高速道路は九州道、大分道で一部通行止めが続いている。船舶も熊本港施設損壊のため、九商フェリー、熊本フェリーが27日まで全便欠航を決め、大分県の別府港は一部岸壁が沈下したことにより使用不可能となっている。

企業への影響長期化の懸念も

阪神・淡路大震災での広範囲な建物・インフラ崩落・全半壊や東日本大震災での津波、原発事故による広範囲な復旧遅延、放射能汚染被害などと同様、熊本地震においても被災による被害は次々に確認されている。建物(事務所、店舗、工場など)が被災した企業も多い。特に目立つのは、建物への直接被害よりも非構造部材への被害で、設備配管の破損、設備機器の転倒・機能の停止、家具・什器の転倒、外壁の脱落、照明器具・天井の落下、窓ガラスの破損・落下、建具枠の変形・間仕切壁の損傷などで、東日本大震災の被災地域で見られた現象と近い状況が確認されている。

東京商工会議所は東日本大震災発生後の2011年4月14日、企業の被災状況の調査結果を発表したが、回答した企業の90%以上が何らかの影響を受けたと回答した。中でも建物の被災が約25%、売上・来店者数などの営業状況に影響を受けた企業が約80%となっており、熊本地震においても、物理的な復旧後も企業への影響が長期間継続する可能性を示唆している。また、当該調査では、広範囲に影響があった事例として、原材料・資材・商品などの調達状況、親会社・取引先への配送状況、決済・資金繰り状況、社員の出社状況ほか労働力の確保の状況、計画停電による店舗・工場の稼動状況などが挙げられている。コンサルティング会社ケー・シー・エスの調査によると、東日本大震災後での被災後の要因別事業所数で、原材料調達困難のリスクが津波の被災リスクとほぼ同数となり、原材料調達困難による生産被害が多数あったことが確認されている。また同調査では、サプライチェーン被災で原材料調達が困難となり、約2カ月の事業停止と回答した企業が多くあり、その中でも飲食料品産業や輸送機械産業の生産回復が長期化(飲食料品:116日、輸送機械:110日)していた。

熊本地震でも、電気・機械関連、自動車関連、食品関連、医療・化粧品、製紙・製鉄・化学関連、物流関連、小売業関連、飲食関連、GS・石油関連、建設関連などで被害が続出している。

復旧と支援を並行する段階へ

余震回数頻度の高さや広範囲な影響が続く熊本地震では、少なくとも2カ月くらいまでは復旧と警戒の二段構えが必要となる。東日本大震災で反省した従業員の安否確認や避難計画、事業一部停止や全停止のしくみは熊本地震では比較的成功していると考えられる。BCP(事業継続計画)においては大地震の場合、本震・余震を含めて事業を停止・再開のための条件設定や従業員の安全を担保する避難計画が必要であり、それを支援する安否確認システムを保持することが重要となっている。

今後は、経営者は従業員およびその家族の安否・社内インフラ、取引先および仕入先の被害状況の確認から社内関係被災者の救援体制、事業再開・継続のための体制の再構築を図ることが求められる。また、被災現場においてCSRの視点からの近隣住民などの直接的被災者支援体制の構築および企業の義援活動などの間接的支援体制の検討・実施も必要だろう。すでに一部の企業が、義援金や支援活動を始めているが、これまでの失敗事例を学び、単に送金・送付を自治体や避難所に行うのではなく、現地被災者と密接に関係しているNPO法人などと連携して、確実に運用されるよう企業側が努力している事例も確認されている。

危機管理コンサルタント 白井邦芳(しらい・くによし)

1981年、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、危機管理コンサルティングに多数関わる。2008年、AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員に経て、ACEコンサルティング エグゼクティブ・アドバイザー。危機管理、リスクマネジメント、コンプライアンスなどの専門家として、これまでに約2400事例の企業案件に携わる。
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