企業が今、コーポレートブランドの再構築に取り組む5つの理由
コーポレートブランドの再構築に取り組む企業が増えている背景とは。日本取引所グループ、ウシオ電機、大塚家具などのブランディングに関わってきたブラビス・インターナショナルの笹田陽勇氏が解説します。
コーポレートブランドをつくる広報
社内外への浸透、効果検証─ブランド刷新のプロジェクトの課題は尽きない。3社の声から、ブランディングに関わる広報部門の課題に迫った。
左からオークローンマーケティング ショップジャパン広報部 部長 板野可奈子氏、オーレック ブランディング広報グループ 課長 関 雅文氏、フリュー 経営企画部 広報チーム リーダー 福地聖佳氏
編集部: 今回はこの2年の間に、コーポレートブランドの一新に取り組んできた3社の皆さんにお集まりいただきました。まずは最初のハードルとなる、「新ブランドの社内への浸透」のための取り組みを教えていただけますか。
板野: オークローンマーケティングでは2014年に「ショップジャパン」のリブランディングを発表しましたが、やはりまずは社内浸透が一番の課題でした。もともと商品ブランドの力が強い会社なので、「商品力>ショップジャパンのブランド力」という認識があり、その考え方を社内で打破していくのはなかなか大変なことでした。
関: オーレックは3月に新しいブランドを発表したばかりなので、社内浸透のための施策はまだこれからなんです。ただ社内の認識として商品があらゆる活動の基軸になりやすい、という点は共通している課題だと思います。
福地: 社員が大事にしてきた、既存のイメージを変える必要性を理解してもらうのは本当に大変なことですよね。フリューは2015年4月に現在のコーポレートブランドをお披露目したのですが、ロゴを変えてまで「プリントシール機」という単一の事業のイメージから一歩進もうとする動きには戸惑う声もありました。「なぜユーザーにも親しまれている、認知されているロゴをわざわざ変えるの?」と。
板野: いきなり「今度からはこのコンセプトに従ってください」と言われても戸惑ってしまうんですよね。リブランディングは成果が表に出てくるまで時間がかかるので、これまで順調に成長してきたチームは、なおさら抵抗感があったと思います。
関: トップの思いはもっと高いところにあったとしても、現場がついていくのは簡単なことではないですからね。オーレックでも旧ロゴは27年間使用していましたし、十数人もの外部のスタッフの皆さんに参画いただくというのは、現場からすればかなり思い切った取り組みだったと思います。
編集部: ではブランドの考え方を理解・共有する場をどのように設けていったのでしょうか。
福地: フリューの場合、ブランドが提供する価値(ブランドプロポジション)を言語化した「Precious Time」をテーマに、社員一人ひとりが対話をする場を設けました。「お客さまにPrecious Timeを届けるべく、自分の業務においてどのような価値を付加できるのか?」といった項目を簡単なワークシートをもとに考えようという取り組みで、2015年度は年に2回、実施しました。
関: オーレックでも、ぜひそういう場を取り入れていきたいですね。今後、階層ごと、部署ごとなど小集団で経営理念の浸透やグループ討議を継続的に実施したいと考えていたところです。
板野: 進め方としては私たちも似ていますね。社内理解の促進のために、役職問わず「ブランドマスター」と呼ばれるスタッフが講師を務める社内研修の時間をとっていました。現在は「ブランドコミッティ」というブランディング部と社長および経営層、主要部署から成るグループをつくって、月1の頻度で2時間ほど議論をしています …