800近くある国公私立大学が受験生や資金を求めて競争する教育現場。スポーツ選手を多く輩出する東洋大学で広報を務める榊原康貴氏が、現場の課題や危機管理などの広報のポイントを解説します。
2015年4月6日に日本武道館で行われた入学式の様子。
まさに桜の季節といえる4月。3月から卒業式・入学式と、大学は最も慌ただしい時期を迎えます。たくさんの出来事が同時に進行する、ある意味一番大学らしい時期かもしれません。大学という職場で24回この時期を過ごしましたが、とても活気があって教育現場で仕事をしていることを実感します。終わりと始まり、様々なものが交錯する、卒業式や入学式にまつわる広報の話を今回は書きたいと思います。
震災後に武道館で入学式
東日本大震災直後の2011年4月、入学式を取りやめる大学が多い中、東洋大学では例年通り入学式を実施しました。入学式を例年通り開催した関東の大規模大学は少なく、これはいかに大きな災害であったかを物語るひとつの象徴といえるのではないでしょうか。
震災直後の状況は、余震があり、空間放射線量なども心配な時期でした。日本武道館という巨大な閉鎖空間、耐震強度の課題、交通機関の間引き運転や節電状況など想定されうるリスクはとても高かったと思われます。ある意味、リスクを取った状況ではありますが、東洋大学では入学式を実施することを選びました。「入学式を予定通り実施することが震災復興につながる!」「新入生を勇気づけるに違いない!」そんな思いが強かったかもしれません。つまり、式典の開催で学生の未来を応援したかったのです。
このような式典の場面をつぶさに記録に残すことも広報の重要な仕事。この時入学した新入生は、2015年の春卒業しましたが、彼らは日本武道館に再び立ったとき、どのようなことを思い出したのでしょうか。ことさら思い出深い出来事に…