PR会社のスキルを見極める「1次選考」のコツとは?
自社に適したパートナーを見つけるために、押さえておきたいポイントとは?PR会社出身で、現在は企業の広報担当役員を務める筆者が解説します。
元ミクシィ広報で、スタートアップの広報・IR支援などを手がける徳田匡志氏が「PR会社に初めて仕事を依頼する」場合のポイントをステップごとに指南します。
「PR会社に仕事を頼んでいるが、自分たちが思ったように動いてくれないし、成果が出ていない」。これは、あるスタートアップ企業の社長から広報活動に関する相談を受けた際のコメントだ。
私は現在フリーランスとして、スタートアップや上場会社において広報IR活動のコンサルティングや経営・事業のサポートをしている。以前はミクシィ社で広報・IRを担当していたのと、9年前より広報担当向けの勉強会を主催していることから、広報活動に課題を感じている社長や広報担当から相談を受けることが多い。
あるベンチャーキャピタリストによると、スタートアップの主な経営課題は、PR(広報活動)、IR(投資家向け広報活動)、HR(採用活動)の“3つのR”であり、VCとしても注力してサポートする領域のひとつであるという。同時に「広報担当を採用したくても適した人材がいない」という話を聞くことが増えた。スタートアップの企業数の増加に伴い、広報担当の求人需要は増加している。
このようなスタートアップを取り巻く環境の中、PR会社をはじめとした外部パートナーをどう活用していくのかを解説していきたい。なお、本稿ではスタートアップをメインに扱っているが、スタートアップに限らず、一般企業でも広報を始めたばかりの会社や、広報機能がない会社にも参考としてほしい。
本稿でコメントを紹介したスタートアップの社長に対して、自社の広報活動や外部パートナーの活用方法について詳しくヒアリングしてみたところ、こんな声が……。
広報活動はスタートアップの主要経営課題のひとつであり、また多くのスタートアップが広報担当を採用しようとしているなか、逆説的な話ではあるが、スタートアップはそもそも広報活動を実施するべきかを決める必要がある。
スタートアップは一般の企業に比べて、資金が潤沢にあるわけではなく、社員数も業務量に対して満足なリソースを抱えていないことが多い。だからこそ、広報活動を「しなければいけない」という思い込みは一旦捨てて、自社でいま広報活動を実施するべきなのかを判断してほしい。
「日本経済新聞に載りたい」「テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』の『トレたま』に出たい」と社長が言い広報担当が悩んでいる、という話をよく聞くが、あくまでメディアへの掲載は「目的」ではなく「手段」であり、それを「目的」と設定するべきではない。
例えば、女子高校生向けのウェブサービスを運営している会社があるとする。この会社の現在の経営課題として、「ユーザー獲得」を再優先に掲げている。その場合、広報担当がすべきことは、日本経済新聞への掲載ではないはずだ。「ユーザー獲得」という目的に、直接また間接につながるための広報活動を実施するべきである。
もし、この会社が早期に資金調達をしたく投資家を探しており、投資家とのコミュニケーションを強化したいのであれば、日本経済新聞への掲載は広報活動で追う選択肢のひとつとして挙げられるだろう。
「ウェブサービスの提供開始」という広報案件を例にあげてみたい。日本経済新聞の記者からは、新サービスの「売上」や、その事業の「市場規模」などの情報が求められるだろう。一方、IT系ニュースサイトであれば、新サービスの「提供目的」や「機能」についての情報が求められる。
このように本来、メディアとのコミュニケーションにおいては、媒体ごとに「切り口」を変えて情報を伝えるべきである。ただ、すべてのメディアに対して実施することは難しく、「最大公約数」としての情報の伝え方がプレスリリースである。
また、広報活動=プレスリリースと考えてしまう人が多い。確かにプレスリリースは主要な広報活動のひとつではある。ただ、広報活動は決してプレスリリースだけではない。メディアとのコミュニケーションを取る方法(メディアリレーションズ)だけでも、企画の持ち込み、インタビュー取材、ラウンドテーブル、記者会見など様々な活動がある。
また、メディアリレーションズ以外にも ...