一生かけて追求する価値のある「PR」の仕事の未来像を描こう
新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏によるグローバルトレンドのレポート。PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。
新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏による米国からのレポート。現地取材により、PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。
「米PR業界で最も好かれるCEO」と言えば、世界第2位のグローバルPRエージェンシー、ウェーバー・シャンドウィックのアンディー・ポランスキー氏だ。笑顔を絶やさない「共感系」リーダーであるとともに、PRについて深い見識を持つオピニオンリーダーでもある。今回は来日を機に、PR業界の最新トレンドについてインタビューした。アメリカではマーケティングとPR機能の連携強化と一元化、コミュニケーションに関わる社内組織の再編も進んでおり、グローバルPRの最前線の動きはますます加速している。
アンディー・ポランスキー氏
PRは「ブロードキャスト型」から「エンゲージメント型」に大きく変わった。つまり、テレビ放送や広告のようにコンテンツをばらまくのではなく、多様な情報チャネルを通じて相手の心を動かす「ストーリー」を発信することによって、特定のステークホルダーとエンゲージメントを築き、強めていく方向に動いている。同時に、コンテンツマーケティング、デジタルやソーシャル上でのキャンペーンなどに関心が集まっており、PR会社も次々とクリエイティブ経験を持った人材を引き入れ、サービスの幅を広げている。
今はPRエージェンシーもハイブリッドだ。おもしろいのは、広告会社がよりPR会社のようになり、PR会社が広告会社のようになっていること。双方が同じような感覚を持つようになってきているということだ。
これまで、PRとマーケティングは異なるサイロで別々に機能していたが、格段に統合が加速している。今、トップが率先することで、コミュニケーション活動の一元化が急速に進みだしており、企業のコミュニケーション活動に携わるすべての部署が同じテーブルにつき、その活動を総合的に俯瞰し、共通の戦略に基づいて展開している。
例えば、企業側で組織の統合が進んでいる。これまでは、CCO(最高コンテンツ責任者)とCMO(最高マーケティング責任者)が並び立つというケースが一般的だったが、一人の幹部がマーケティングとコミュニケーションの両方を統括するという事例が増えている。
アメリカにおける「PR」と「マーケティング」の連携強化・機能の収れんはデータにも表れている(図1)。
[図1] CCOがマーケティングまで統括している比率
2014年の調査では、PRもマーケティングも同時に統括するCCOの数は2012年に比べ35%増加。CCOとCMOが並存し、それぞれに事業を進めるというやり方から、より一体的な運用ができるような形に組織が変わりつつある。
最近は企業のPR活動においては、「レピュテーション(評判)」が何よりも優先する課題。特に10~20代の若手世代は企業の社会的価値や目的といったものを重視する。マーケティング戦略も「企業レピュテーション」に合致するものでなければならず ...