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作家が危機対応をズバッと指南!

経営者本は「危機管理」のシグナル? ワタミ労災問題を振り返る

城島明彦(作家・ジャーナリスト)

危機を乗り越えるための対応方法は、時事ニュースの中から学べる点が多くある。取材される側と取材する側の両方を経験し、広報業界を30年以上見続けてきた作家・ジャーナリストが、危機対応の本質について解説する。

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事業にも大きな影落とした従業員過労自殺問題 
2009年に発生した、従業員による過労自殺問題が2015年12月、ようやく和解の運びに。この問題では、同社や渡邉美樹氏の対応が度々炎上を招き、いわゆる「ブラック企業」としてのイメージが定着するきっかけともなった。

1998年1冊、2000年1冊、2002年2冊、2004年3冊、2005年2冊、2006年4冊、2007年4冊、2008年4冊、2009年6冊、2010年6冊、2011年5冊、2012年5冊、2013年2冊、2014年0冊、2015年0冊─。「この数字を説明せよ」といわれて即答できる人はまずいないだろう。これらは、“ブラック企業の代名詞”とも揶揄されてきた外食チェーン大手「ワタミ」の創業者・渡邉美樹氏の著書の年別の出版点数である。

渡邉美樹氏の著書が増え始めたのは2006年以降で、2012年までの7年間に34冊も発売された。物書き専業の人間でも、ゴーストライターを使わない限り、これだけの冊数を書くのは難しく、明らかに“バブル”で「異常」レベル。書いてある事柄が重複したり、中身がスカスカで粗製乱造になる。「広報の危機管理」の視点では、シグナルは既に黄色から赤に変わっている。ワタミグループの新入女性社員が過労自殺したのは、創業者の著書が粗製乱造の“バブル期”に突入して3年目の2008年のことなのだ。

その年に発売された著書は、3月『無人島ウィー』(日本経済新聞出版社)、6月『強く、生きる。―夢とともに人は成長する』(サンマーク出版)、7月『14歳からの商い』(ゴマブックス/ワタミが経営する郁文館夢学園の中学生との共著)。

希望に燃えてワタミに入社した女性社員が、過激な労働で将来の夢を奪われ、心身ともに疲弊して「過労自殺」という悲壮な道を選んだのは『強く、生きる。―夢とともに人は成長する』が発売された月なのだから、「灯台下暗し」の典型。本など書いている場合ではなかったのだが、渡邉氏は「24時間365日死ぬまで働け」と社員を叱咤することで、自分の「夢」や「戦うこと」だけを追い続け、出版社がそれに便乗。翌2009年には翻訳物やCDと幅を広げ、出版は6冊にも及ぶ。

見過ごされた危機のシグナル

1984年に地方の一店舗からスタートして一大居酒屋チェーンを構築し ...

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