プロモーションや地域振興など、目的に応じた企業や行政団体によるキャラクター活用事例と、ヒットを生み出すポイントについて、キャラクタープロモーションの第一人者・野澤智行氏が解説します。
2015年11月23日、「ゆるキャラグランプリ2015 in 出世の街 浜松」での結果発表&表彰式の様子。左からしずな~び(静岡セキスイハイム不動産)、さのまる(栃木県佐野市)、尾木直樹(特別審査員)、みきゃん(愛媛県)、出世大名家康くん(静岡県浜松市)、ふっかちゃん(埼玉県深谷市)、くまモン(熊本県)、バリィさん(愛媛県今治市)、寺嶋由芙(表彰式司会)、西秀一郎(実行委員会会長)。
浜松と羽生に割れたキャラ
2015年11月21日から2日間、埼玉県羽生市で「世界キャラクターさみっとin羽生2015」が開催された。今回が6回目の開催で、日本一の参加キャラ数と来場者数を誇るイベントである。人口5万5千人の田園都市に、今年は45万人*1 が訪れた。
*1 主催者(世界キャラクターさみっとin羽生実行委員会)発表。
前回と大きく状況が変わったのは、同時期の11月21日から23日に静岡県浜松市で「ゆるキャラ®グランプリ2015 in 出世の街 浜松」が開催されたことである。2011年から2013年にかけては羽生で最終結果が発表されてきたが、2014年から公募先での独自開催となり、今回は人口81万人の政令指定都市で大企業も多い浜松が選ばれた。ご当地キャラ文化が根付いていない地方都市での持ち回り開催自体は、新たな地域のファン開拓による業界全体の活性化と、単発だからこそ開催地の郷土愛を鼓舞し、住民参加の盛り上がりが期待できる点で意義がある。
浜松市側の都合で決まった同時開催に頭を抱えたのは、各地のキャラ団体だ。B-1グランプリに並ぶ地方色豊かな風物詩として、ゆるキャラグランプリのマスメディア露出は今も絶大。全国上位ランクインを目標に掲げる自治体は多数存在する。日本ご当地キャラクター協会および各地キャラ団体との交流の場でもある羽生に魅力を感じる自治体・団体は多いが、グランプリ上位が至上命題の自治体キャラの多くは今回参加不可能となってしまった。さながら関ヶ原の戦いにおける東軍・西軍のごとく、グランプリ企画によるお墨付きか、団体同士の草の根交流と義理人情か、どちらを優先するか試される場となったのだ。
だが、集票活動を続けることは至難の業である。たとえ地元でトップの人気でも、人口や地元大企業が少ない地域の自治体キャラや、商店街・個人で運営しているキャラには到底勝ち目がない。そのため、ここ数年は負荷の大きさと得られる効果のバランスを考えて、自主的にエントリーを取りやめる団体が続出している。
最終的に、ゆるキャラグランプリにエントリーしたご当地キャラは2014年の1168体から1092体、世界キャラクターさみっとへの参加キャラは430体から377体と、ともに減少する結果となった。浜松会場に参加した約300体のご当地キャラと企業キャラには羽生との掛け持ち組もいたが、そこまで余力のあるところはごく一部であった。また、両イベントをハシゴできたのは一部コアファンに限られ、なぜ別日程で開催しなかったのかとの声が多数聞かれた。
地元企業vsコアファン
ゆるキャラグランプリのエントリー内訳をみると、「企業・その他部門」のシェアが2013年は21.2%、14年は31.3%、15年は36.8%と年々増え ...