世界で最もクリエイティブなPR会社はどこか?─PR業界では、クリエイティビティの強化は大命題。「クリエイティブは広告会社の仕事」という固定観念を持つ人は、いまだに世界のPR業界にも少なくない。PRの仕事ではメディアや有識者などのステークホルダーを巻き込み、動かすことが重要だが、問題はその「動かし方」だ。従来は「対話」や「説得」などを重ねながら関係構築するのがPRパーソンの王道だった。でも、いまや時代のキーワードは「共感」。大きなビヘイビアチェンジ(行動変容)を起こすためには、PRにもクリエイティブなアイデアが不可欠だ。
今回は、世界的なPR格付け機関でもあるThe Holmes Report(ホルムス・レポート)が毎年発表する「Global CreativeIndex」の2015年最新版を紹介しよう。ここでは、世界中の25以上のPRアワードの賞獲得データをもとに、独自の採点方式でランキングを決定している。
世界ランキング1位に輝いたのはウェーバー・シャンドウィック(米国・インターパブリックグループ)。世界最大の飢餓救済PRキャンペーンとして著名な「World Hunger Relief」など、3つのキャンペーンが世界受賞ランキングトップ10に入ったことで、前年の3位から首位に躍り出た。2位は、前年まで2年連続1位の座を守っていたオグルヴィPR(米国・WPPグループ)。広告会社系PRファームである同社のクリエイティビティには定評があるが、ウェーバー・シャンドウィックの大躍進で1位の座を明け渡した格好だ。そして3位のMSLグループ(仏・ピュブリシス・グループ)だが、同社のベスト3入りはたったひとつのキャンペーンによってもたらされた。2015年のカンヌPR部門でグランプリを受賞したP&Gの「#LikeAGirl」キャンペーンだ。「Global Creative Index」のPRキャンペーン別集計でも67ポイントと2位の20ポイントを大きく引き離した。広告会社であるレオ・バーネットが前年の37位から一気に7位にランクインしているのも、このキャンペーンがMSLとレオ・バーネットの連名エントリーだからだろう。
トップ10は世界的なPR会社グループ。「規模が大きけりゃ、そりゃ受賞の確率はあがるわな」という声も聞こえそうだが、そこは信頼あるホルムス・レポートだ。PR会社の規模を勘案し「従業員一人あたりの受賞ポイント」というインデックスも発表している。すると、まったく別のランキングになるのが面白い。ここでトップに輝くのはノルウェーのTrigger社。最近このコラムでも「世界を動かした12歳の花嫁」として紹介した「Stop The Wedding」キャンペーンを手がけたPRブティックだ。以下、英国のUnity社、Dynamo社と続く。ヨーロッパ勢強し、である。ではまた来月!
本田哲也(ほんだ・てつや)ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー/戦略PRプランナー。主な著書に『最新 戦略PR 入門編/実践編』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)、共著に『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。 |