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REPORT

石川県・高野誠鮮さんの著書が原案、ドラマ『ナポレオンの村」が描く地方創生とは

高橋正尚(TBSテレビ『ナポレオンの村』プロデューサー)

本誌連載中のスーパー公務員・高野誠鮮さんの著書『ローマ法王に米を食べさせた男』を原案とした、TBS系列の連続ドラマ『ナポレオンの村』(主演:唐沢寿明)が7月から放映されている。いま注目を集める「地方創生」というテーマに挑んだ、高橋正尚プロデューサーの狙いとは。

7月10日の完成披露試写会には石破茂・地方創生担当大臣も登場。

石破大臣も太鼓判のドラマ

─『ナポレオンの村』は高野誠鮮さんの人物列伝のドラマかと思いきや、高野さんの著書は「原案」という位置づけなんですね。

「高野さんがローマ法王に手紙を書いて、お米を献上した」という事実はドラマティックなんですが、ストーリーとして再現しようとすると、非常に難しかったんです。本当のことなのに、高野さんの発想があまりに奇抜すぎてフィクションにしか思えないというか。なので、そのエピソードをもとに脚本を作ったものの、丸ごとボツにしたこともあります。

今回の企画にあたって、全国で地域活性化のために頑張っている方がたくさんいることを知りました。その要素も色々とドラマに取り入れています。例えば、第1話のスカイランタン。これは新潟県津南町の雪まつりなどで実際に行われているものです。内閣府やNPOなど町おこしの担い手の皆さんにも取材させていただいて、活動資金を賛同者から集めるクラウドファンディングなどの手法も登場させました。

「地方創生」は今でこそ注目のキーワードですが、去年の夏に企画を始めた当初は「こんなに地味なテーマで連続ドラマになるのか、大丈夫か」と言われたこともあったんです。地域活性化なんて誰しもが興味を持つメジャーなテーマではないんじゃないか、と。

それでも唐沢寿明さんはじめ、俳優陣にオファーしたところ「2015年の今、日本が元気になる新たなテーマにチャレンジすることに意義がある」と出演を即決してくださって。非常に嬉しかったですね。

7月10日の完成披露試写会には石破茂・地方創生担当大臣にもゲストにお越しいただきました。「地方創生」のために大臣のポストが新設されるほどの時代ですし、地域との連携や農業などに注目している企業も多いですよね。ですので、地方にお住まいの方のみならず、都会のビジネスパーソンの皆さんにもぜひ見てほしい。仕事の参考に、とまではいかないけど、何かしらの可能性を見つけるきっかけにはなるんじゃないかと。僕自身がそうでしたので。石破大臣が自ら「爽快な気持ちになれるドラマ」と太鼓判を押してくださったのも、非常に力になりました。

東京都庁に勤める浅井栄治(唐沢寿明)は、限界集落・神楽村を抱える東京都星河市役所に赴任。市長の福本純也(沢村一樹)、農林商工課の岬由香里(麻生久美子)らは村の活性化に消極的だが、浅井は祭や米など、村の伝統を現代風にアレンジして「ここにしかない」価値を生み出すべく奮闘する。

高野さんの生き方に学べること

─元々、ご自身も地域活性などのテーマに興味があったのでしょうか。

若いころから、その土地ならではの食べ物とか名産品に興味があって。出張先で「道の駅」があるとつい立ち寄って、1メートルくらいのタケノコとか、こんな分厚いシイタケとか見つけるとテンションが上がって、色々買ってしまうタイプでした(笑)。

とはいえ、これまで作ってきたドラマは『ナポレオンの村』とは真逆の、ミステリアスな作品が多かったんです。ただ僕も家に帰ればいち視聴者なわけで、今、お茶の間でどんな番組を観たいのかと問われると「明日はもうちょっとだけ頑張ってみよう!」と思えるドラマなんじゃないか、とふと思ったんですね。今回は特に「日曜劇場」という枠ですし、難しいことは考えず楽しめて、ほっこりとした気持ちになれる作品を作りたいと。そんなときに出会ったのが、高野さんの著書でした。

僕がこのドラマで伝えたかったのは、「高野さんのような熱いスピリットを持った人がいるんだから、日本もまだまだ捨てたもんじゃない」ということ。石川県羽は咋(はくい)市の神子原(みこはら)という地域は、高野さんの奇抜なアイデアと強いバイタリティという両輪があってこそ活気を取り戻したわけですよね。「変わった発想の面白い人」というだけではなくて、結果が出るまで自らの思いを貫き通してきたバイタリティが本当にすごいなと。そのエネルギッシュな生き方はドラマの主人公のキャラクターとして、ふさわしいと思いました。

企画にあたり地方創生に真剣に取り組んでいる方にお会いして、その活力に僕自身も勇気をもらいました。ただ、地域の問題を自分ごととして捉えられている人はまだまだ少数だと思うんです。だからこそ、皆さんが少しでも興味を持って、日本を元気にする一歩を踏み出す一助になってほしい─それこそがエンターテインメントの持つ役割だと考えています。

TBSテレビ 制作局 ドラマ制作部 高橋正尚氏(たかはし・まさなお)
1975年生まれ。愛知県出身。早稲田大学卒。2000年にTBSテレビ入社。バラエティ制作を経てドラマ制作部へ。主なプロデュース作品に『山田太郎ものがたり』『魔王』『冬のサクラ』『アリスの棘』がある。

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