企業の社会的責任に関わる意思決定に疑念の声 不信感を払拭する危機管理広報とは
複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを98専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
リスク広報最前線
近年さらに複雑化する企業リスクに、広報はどう立ち向かうべきか。企業のリスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新の企業リスク事例を踏まえて解説する。
7月中だけで10回以上 東芝のこまめな情報発信
一連の問題を受け、東芝では逐一情報発信を続けている。7月中だけでも、プレス・株主向け合わせて10件以上の情報発信がなされている。投資家、消費者をはじめとしたステークホルダーの信頼を大きく損ねた今回の不祥事。広報による情報開示は、信頼回復の一助となるか。
2015年4月3日、東芝が2013年度の会計処理について適正性を検証するための特別委員会を設けたことを発表しました。これを契機として、東芝の不適切会計について注目が集まっています。
5月8日に第三者委員会が設けられ、7月20日に同委員会は「会計処理の適正性を欠く」として、2008年度から14年度の売上を合計で149億円、税引前利益を1518億円減少させる必要があるとの調査報告書を発表しました。
これを受け、東芝は過年度決算を修正し、取締役・代表執行役の辞任、取締役・執行役の報酬減額などを発表しました。
創業140年を超える老舗メーカーが組織的に適正性を欠く会計処理をしていた事実は、社内外に大きな衝撃を与えました。
東芝の一連の広報活動で注目すべきなのは、特別委員会や第三者委員会の設置など、進捗状況をこまめに発表していた点です。
4月3日に特別委員会の設置とその理由を公表し、これ以降も、過年度修正額見込み、調査に関する報道内容についてのコメント、調査報告書を開示する予定の日時、調査報告書を受けての対応などについて、判明し次第逐一発表していました。
上場企業で会計処理問題の適正性に問題が生じたことは、言うまでもなく、株価に影響を与える事実です。このため、投資家に向けてこまめに情報を開示しなければならないのは、上場企業の責任として当然の責務です。
それだけではなく、こうした細やかな情報公開は、企業の信頼性と密接に関係します。日本を代表するメーカーとしてのブランドを築いていた東芝が …