危機を乗り越えるための対応方法は、時事ニュースの中から学べる点が多くある。取材される側と取材する側の両方を経験し、広報業界を30年以上見続けてきた作家・ジャーナリストが、危機対応の本質について解説する。
歴史に残る失態に国内外への影響避けられず
日本を代表する老舗メーカーの歴代社長が辞任することとなった今回の東芝の問題。国内外に広く飛び火し、いまだ収束のめどがたっていない。折りしもコーポレートガバナンスに注目が集まっ
ている昨今。組織ぐるみで起こした今回の不祥事による中長期的な影響は避けられなさそうだ。
説明するまでもないが、本連載で取り上げている企業は「危機管理」に失敗した企業だ。今回は、先々月号の「東芝不適切会計事件」の第二弾。二度も取り上げることになった情けない企業は、同社が初めてである。
2月12日に「内部告発」という形で「証券取引等監視委員会」の検査を受けた東芝が、4月3日にプレスリリースを発表して事件が明るみに出てからというもの、東芝の広報は「針のむしろ」に坐り続け、屈辱の7月21日の社長記者会見を迎えた。その前日、広報は、社外に調査を依頼していた「第三者委員会の調査報告書」の「要約版」(88ページ)をまず発表し、「全体版」(303ページ)は記者発表当日に公表した。
全文版に東芝広報が添えたリリースは4枚で、問い合わせ先は広報・IR室長となっている。リリースに盛り込まれた内容は、次の4点である。
(1)第三者委員会の報告書の全文の公表について
(2)経営責任の明確化について
(3)経営刷新委員会の設置について
(4)その他の当社の対応について
(5)今後のスケジュールについて
スケジュール表には、社長の記者会見とは別に、午後7時から第三者委員会の記者会見があることや、8月中旬に新たな経営陣を発表し、異例の二度目となる株主総会を8月31日に開く予定であることなどが記されていた。 …