主要なPR会社の現場で奮闘する若手・中堅のPRパーソンに、現場の仕事や今後のPRのあり方について聞く。
「PRの最先端を行く海外の企業は、PRに対する期待値が非常に高い。担当者がこちらより1枚も2枚も上手だった、ということも少なくありません」。そう話すのは、IT分野など外資系企業のPRなどに強みを持つ井之上パブリックリレーションズの吉田俊さんだ。
国内外の展示会、IT、通信機器、ロジスティクスや半導体など8社ほどのクライアントを持つ吉田さんは若手のホープで、現在の上司はアメリカ人だという。PRとの出会いは大学時代。早稲田大学に在籍していた吉田さんは、受講した「パブリック・リレーションズ概論」という講義でPRの面白さに魅了された。同社の井之上喬社長との出会いも、この講義がきっかけだった。
「井之上の講義を聴いて、学生ながら、メディアなどのステークホルダーとクライアントの関係構築を支援することで社会に貢献するという、PRのダイナミズムに惹かれました」。
座学で学んだことは在学中、実践にも活かした。同大学の創立125周年記念プロジェクトでは、自ら率先して広報部門の統括を担当。学内外を奔走し、プロジェクトの企画が朝の情報番組に特集されるという実績も残した。また学生ベンチャー企業のPR統括を担ってPRの実践を積み重ねた。
しかし、「専門的な知識や強みを持ってからPR業界で活躍したい」という思いから、新卒では大手FA機器メーカーに入社。製造業を営業先とする現場の最前線で営業職を3年間務めたのち、2013年に同社に入社することになる。「PRの仕事は、クライアントの情報はもちろん、業界の現状やトレンドなど変化する外部環境を把握することがとても大切。前職時代に身に付けた、営業先の情報を徹底的に調べ上げる習慣や製造業における知識・インサイトは、今も生きています」。
日々クライアントと向き合う中で、外資系企業を相手にするからこそ、抱える苦労も多い。「言語の違いはもちろん、日本と海外ではメディアの性質も大きく異なります。海外では当たり前のようにできるPRの手法も、日本ではなかなか実現できないことも少なくありません。そこで“できない”理由を並べるのではなく、『では、こういったアプローチはどうですか?』と、解決策を一緒に提示することが大切だと思っています。そうしてうまくクライアントとメディアのリレーションを構築し、成果を出して信頼を獲得することが、PRの醍醐味ですね」。
PR活動の成果は依然として、「メディアへの露出量」が重視される状況が続いている。クライアントからも評価されやすい指標であるだけに、つい短期的なゴール達成に甘んじてしまいがちだが、吉田さんの仕事のベースにあるのは「そのPR活動がどれだけ本業となるビジネスに貢献しているか、こだわり続ける」という強い信念だ。PR会社でのキャリアも3年目に突入した今、クライアント満足の追求はもちろんのこと、より広い視野で「PRという仕事の価値を高める」という目標が、日々の仕事のモチベーションとなっている。
企業DATA | |
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企業名 | 井之上パブリックリレーションズ |
所在地 | 東京都新宿区四谷4-34-1 新宿御苑前アネックス2F |
代表者 | 井之上 喬 |
従業員 | 30名(2015年6月現在) |
沿 革 | 1970年創業。国内外の企業、政府・公共機関などのクライアントにコンサルをベースとした総合的なPRのサービスを提供。1980年代のアップルやインテルをはじめ、国内外の革新的なビジネスモデルを持つ企業のPRに関するサポート実績多数。 |
アカウント・サービス本部 AS1部
早稲田大学を卒業後、大手FA機器メーカーを経て、2013年に井之上パブリックリレーションズ入社。外資系企業を中心に幅広いクライアントのPRを担当。PRSJ認定PRプランナー。 |