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ドラマ「リスクの神様」レポート

リスクフルな社会を生き抜く企業にこそ、報道されないドラマがある

フジテレビ 『リスクの神様』プロデューサー 成河広明

「あらゆる企業にリスクはつきもの。その裏にある人間ドラマを描きたい」─。そんな成河広明プロデューサーの長年の構想から生まれたのが、『リスクの神様』だ。企業広報の視点から、ドラマに登場する危機対応の見どころに迫った。

成河広明氏(なりかわ・ひろあき)
フジテレビ 編成制作局 総合編成センター 編成部 企画担当部長1994年入社。編成部で、ドラマの企画を担当。主な作品に、『デート~恋とはどんなものかしら~』、『リーガルハイ』シリーズ、『謎解きはディナーのあとで』シリーズなど。

個人の世界を脅かす企業の危機

─リスク管理の「教科書」のような緻密な描写やストーリーに毎回、引き込まれている読者も多いと思います。企業の危機対策室が舞台のドラマが出てくるというのは、時代の流れを感じました。

ドラマ化に向けて動き出したのは、2014年の夏ごろからですね。僕自身、10年以上前に雪印など食品関連のリスクが多発していた当時から、危機対策というテーマに個人的な興味があったんです。

ひとつ道を誤ると、どんなに優良企業であっても一気に転落してしまう。その怖さをフィクションの世界で描いたらスリリングだし、まだ誰も観たことのないドラマになるだろうなと。スタッフとともに国内外の危機管理の専門書を色々読んで、その中で危機管理コンサルタントの白井邦芳さんにも取材させていただき、監修をお願いすることになりました。

企業の広報活動の側面から言うと、どんな事件にもマスコミ対策が必要ですので毎回、メディア対応のシーンが出てきます。広報部もありますが、不祥事が起きた際の公式発表や記者会見を仕切って、社内の関係者にメディアトレーニングをさせるのも危機対策室の役割だと位置付けています。

ネガティブな世論との戦い

─『広報会議』の読者にとっても、危機管理というのは永遠の課題です。「守り」の広報とよく言われていて、やはり発生して初めて危機管理の重要性に気付く、という側面もある。いかに経営陣の理解を得てリスク対策を会社として万全に進めていくべきか、が共通課題です。

僕は最初のスタッフとキャストの顔合わせで毎回、同じ話をするんです。「テレビドラマは時代を映す鏡であるべきで、一種の社会的なテーマが必ず伴うものだ」と。そういう意味ではまさに2015年の今は、相当リスクフルな社会だと思います。ネットで叩かれるような企業や個人が出てくると一気に拡散して広がって、ネガティブな世論が生まれてしまうケースも増えていますよね。それが決していい社会だとは僕は思わない。かといって、企業の広報活動も危機対策も正解があるわけではない、という難しさもある。

ドラマには一種のリアリティとエンターテインメント性が必要ですから、この作品で描きたかったのは危機対策の現場はもちろん、リスクの裏で起きている個々人の人間ドラマなんです。

第一話で「危機に直面した以上、無傷ではいられない。地位、仕事、家族、恋人、名誉、プライド……すべてを守ろうとしたら何も守れない」という西行寺智(堤真一)のセリフがあったように、謝罪会見に出ている人にもプライベートがあるし、家族がいます。もしも自分の父親が頭を下げているニュースがテレビや新聞に出たら、その子どもは、奥さんはどんな気持ちでいるんだろう……と想像すると、企業のリスクはビジネスの境界線を越えてプライベートの世界にも入り込んでくる怖さがあります。

西行寺は「リスクの神様と呼ばれている男」という触れ込みで登場しますが、第二話で彼は「我々は神じゃない。すべてを救えるわけじゃない」と言うんですね。つまりどんなに万難を排したとしても、リスクというのは誰しもコントロールしえない「神のみぞ知る」の世界。どんな人もリスクに直面する可能性はある、というメッセージなんです。

会社勤めか否かにかかわらず、「もしかすると明日、自分の身に降りかかるかもしれない……」と感じてもらえたら、エンターテインメント作品としては成功だと思っています。でも小さい子が観たら夢がなくなっちゃうので(笑)、一般的に言う“大人”に楽しんでほしいです。

 


製品欠陥問題の責任をすべて背負うことになった神狩かおり(戸田恵梨香)に
危機対策室長・西行寺(堤真一)は「君が絶対に守りたいものは何なのか。
今こそ考えるべきだ」と諭し、謝罪会見用のスーツを差し出す。

©フジテレビ

食品会社で異物混入問題が発生。初期対応のミスにより、ネガティブな報道が相次ぐ。
「今回の危機対策は失敗だったということですよね」と詰め寄るかおりに、
西行寺は「危機対策の専門家である自分たちは神様ではない」と突きつける。

青臭い正義論で済まされない

─経営陣も危機対策室も骨太な俳優陣ばかりで、その中で奮闘するエリート女性社員・神狩かおり(戸田恵梨香)の立ち位置は面白いですね。

そんなに男っぽい話を目指していたわけではないのですが、結果的にそうなりました(笑)。企業が舞台のドラマとなれば、単純な青臭い正義論では済まされないこともあると思うんです。企業経営の危機となれば、清濁併せ呑まなければならない場面も多い。原因は何であれ、ひとたびリスクに陥ったら社員も企業も元通りにはなりません。

「すべてを失いたくないから」と守りに入ってしまうと、結局、逃げの姿勢を見抜かれて叩かれてしまう。仮に責任を負うような立場ではなかったとしても、真実を優先させることで企業がさらに危機に陥ることもあります。そういう複雑な葛藤があるから、凄く人間的なドラマになる。その中で戸田さんが演じる「かおり」はこのドラマに自由な視点を与えてくれていると思います。

一般論かもしれませんが、能力のある女性は下手な社内政治をしないぶん、真実が一体どこにあるのか、見えていることが多い。彼女は30歳の設定なのでキャリアも積んでいて、大人の世界がそんなに綺麗ではないことも分かった上で、男社会から一歩距離を置いています。だからこそ第一話で挫折を味わったわけですが、そこから彼女の目線で物語は進んでいくし、硬直化した組織が危機を生んでいくようにも見えるかもしれない。その過程を皆さんに楽しんでほしいですね。

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