ホテルで発生した爆発事件 広報に迫られる危機対応〈第三編〉
ホテルシーサイドマリーナ木更津で起きた爆発。広報課長の名城亮介は、部下の白坂ひろみから届いたある宿泊客への“違和感”を捜査員に告げた。監視カメラの画像に映っていた不審者について情報提供を募ると、白坂の同期である酒井茉由が手を挙げた。その人物は、ホテルが隠していたある事実ともつながっていて……。
広報担当者の事件簿
【あらすじ】
社長室に呼ばれた広報部長の龍田信人が1時間も戻らない。東京建設の広報課長、丹波和広はこみ上げる悪い予感をかき消せずにいた。そんな時、広報室に1本の電話が入る。「御社の決算で、不適切な処理が行われていたという情報があります」。週刊誌の記者からの問い合わせだった。混乱する丹波に、社長室から戻ってきた龍田が衝撃の事実を告げた─。
広報部長の龍田信人が社長室に呼ばれてから1時間が経過した。窓の外を眺めると、昨夜から降り出した雨が、今も窓ガラスを濡らしている。頭上からは冷えた空気が送り出されているが、梅雨らしい湿気が肌にまとわりつく。課長の丹波和広をはじめとした5人の広報部員は、部内のミーティングを中座した龍田の戻りを待っていた。あと10分で昼食時間になるが、皆、席を外していいものか迷っている。「みんな、食べてきていいぞ。俺が待っているから」と丹波が声をかけた。「では、さらっとラーメンでも食べてきますね。すぐに戻ってきます」と広報部の紅一点、渡瀬真琴がいつもの笑顔で応じたのを合図に揃って出て行く。「ゆっくりでいいぞ」と背中に声をかける。
一人残された丹波は社長室での議題が気になっていた …