トップとの連携は、広報戦略の肝であると同時に、悩みも多いテーマだ。
本講演では、トップ含め経営層との連携に注力し成果を上げている2社が登壇。カルビーは広報を重視するトップと意識をともにし、物理的にも距離を近く保つことで、社内外への一貫した発信を実現している。2014年に社長交代が行われた帝人では、幅広い事業の発信を戦略的な計画や経営層と密に連携する仕組みで支える一方、広報のミッションを日々問いながらトップとの関係を構築している。
日々のコミュニケーションだけでなく、経営層とベクトルを同じくする取り組みや工夫が効いていることが見えてきた。

本講演のキーワード
■クライシス時は、トップの言葉に基づいて全社的に迷わず対応している
■広報には外からの客観的な見方や意見を伝えることが求められる
関係構築に役立つ「仕組み」
——まずは、現状と近年の取り組みを教えてください。
宇佐美 ▶帝人は高機能素材、ヘルスケア、ITと多様な事業を展開しており、ビジネスの大半がBtoBの領域となっています。我々コーポレートコミュニケーション部は、テイジンブランドの価値向上をミッションとして様々な機能を担っています。
今回のテーマに関していうと、素材メーカーとしては破格の年間約200本の情報発信を支える仕組みとして「情報発信の目標点数管理」を取り入れています。前社長の時に導入したもので、これによってトップを含め各機能、各事業の責任者が年間の目標を持って情報発信に取り組んでいます。目標があることで、発信意欲も高いですね。
後藤 ▶カルビーは2009年、60周年の節目に経営陣を一新し、オーナー企業からの脱却をしました。代表取締役会長兼CEOにジョンソン・エンド・ジョンソン元社長の松本晃、代表取締役社長兼COOには生え抜きの伊藤秀二が就任し、翌年に本社を赤羽から丸の内へ移転統合しました。奇しくも2011年3月11日に東証一部に上場しまして、変革の嵐がいまだ吹き荒れています。
コーポレートコミュニケーション本部は、投資家以外のすべてのステークホルダーへの窓口で、「カルビーの○○(商品やサービス)っていいね!」と周囲に思わず勧めたくなる人を増やすことを目指しています。

2014年4月1日付で社長が交代した際、4月までは事前報道がないよう注意を払い、
4月からは一転して網羅的なメディア露出を図った。写真は当時のニュースレターより。

カルビーの松本会長は『広報会議』のインタビューでも「広報は“攻めと守りの要”」であるとして、
広報の重要性について語った(2015年5月号より)。
——帝人では2014年に社長が交代し、新社長PRに注力されていましたね。
宇佐美 ▶2014年4月1日付で、当時の取締役最年少だった鈴木純が新社長に就任しました。1月末に発表し、事前報道のないよう注意しましたね。
就任後は一転、網羅的にメディア露出できるように企画し、業界では非常に若い社長であることや、サッカーが趣味であることを切り口にするなどして、メディア対応を行いました。サッカーファンの記者の方も少なくないので、サッカーになぞらえた例え話がうまく記事に盛り込まれるなど、成果があったように感じます。
また、これは通常時の経営層の取材対応やリリース作成でも同じですが、なるべくキャッチーな言葉を意識的に使ってもらうように配慮しましたね。
——トップとの関係構築において留意していることなどはありますか。
宇佐美 ▶広報の広聴機能の観点から考えると …