頻発している企業コンプライアンスや内部統制に関する企業リスク事例。危機に備え、企業イメージの構築・発信を担う広報担当者が押さえておくべき企業法務とは。最終回となる今回は、注目が高まる食品の機能性表示について解説する。
新しい食品表示制度とは?
2015年4月1日、新たに食品表示法が施行された。これまで食品の表示について一般的なルールを定めている法律は、食品衛生法、JAS法、健康増進法であった。しかし目的の異なる3つの法律ごとに食品表示に関するルールが定められていたため制度が複雑となり、非常に分かりにくいものになっていた。
食品表示法は、上記3法の食品表示に関する規定を統合したものである。整合性のとれた表示ルールの策定が可能となり、消費者、事業者双方にとって分かりやすい表示を実現できるようになった。中でも特筆すべき点は「食品の機能性表示制度」である。
これまでも機能性表示については栄養機能食品や特定保健用食品などにおいては認められていたが、厳格な要件のもとで認可されていたために中小の食品会社では活用が困難であった。しかし、アベノミクスの一環である日本再興戦略の中で「食の有する健康増進機能の活用」が提唱され、企業の責任において「科学的根拠をもとに機能性を表示できる」新たな方策の実施が求められた。そこで行政による事前の厳格な審査を要することなく(つまり企業の責任で)機能性に関する表示が認められる届出制になった。
つまり、機能性表示を行うにあたって必要な科学的根拠さえあれば、事前審査の必要ない(届出のみでなしうる)「消費者の誤解を招かない、自主的かつ合理的な商品選択に資する表示制度」が誕生することになったのである。
企業側にとっても商品戦略の一環として、この「機能性表示」を活用する姿勢は積極的である。すでに機能性表示に関するガイドラインも公表され、表示に関する届出も開始されている。
4月2日の日本経済新聞の記事によれば、すでに多くの企業が機能性表示に関する届出を行っているようで、ノンアルコールビールに「食事の脂肪や糖分の吸収を抑える」、サプリメントに「抗酸化作用」などと表示される日が近いかもしれない。
過大な期待を抱かせるリスクも
このように食品表示法の制定は、国民の健康増進を促し、消費者に「食の安全」をアピールするためにも効果的であり、さらに食品会社の営業活動にもメリットがあるということで「いいことずくめ」のような印象を抱かせる。しかし現実の運用を考えてみると、決して甘いものではない …