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青山広報会議

サイボウズ×マピオン×丸山珈琲×村上農園 「企業ロゴ」一新でブランドはどう変わる?

丸山珈琲/村上農園/マピオン/サイボウズ

企業ロゴやスローガンといったコーポレートアイデンティティ(CI)は、いわば会社の“顔”であり、その企業を体現する象徴のようなもの。そんなCIを、近年変更し、イメージチェンジを図った企業がある。なぜ、CIの変更に踏み出したのか?
社内外への新CIの浸透に向け東奔西走する4社が、変更に乗り出した背景や制定に至るまでの過程を語り尽くした。

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この1年で企業ロゴが変わった4社 before→after

7年かけ、ようやく誕生した新CI
サイボウズ

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3つの円でチームワークを表現。色、パターンの組み合わせで20種類のロゴを用意し、多様性のある企業文化を象徴するデザインとした。これは基本パターンのロゴ。

新・企業スローガンで“移動”に深みをもたせる
マピオン

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設立以来、初めてロゴマークを変更。企業スローガン「ココロも、カラダも、動かすマピオン」をデザインコンセプトに制作。スローガンは仲畑貴志氏が手がけた。ロゴ制作は電通。

世界の誰もが分かる丸山珈琲へ
丸山珈琲

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開業20周年時に作成したエンブレムはそのままに、長年使い続けてきた漢字の「丸山珈琲」を、「MARUYAMACOFFEE」と世界中の誰もが読めるように英語表記に変更。

企業トップ交代に伴う、社内意識改革とロゴ変更
村上農園

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「Murakami FARM」の頭文字Mをモチーフに、立体的なデザインを採用し、村上農園が目指す「先進性」「独創性」を表現。アートディレクションは佐野研二郎氏によるもの。

CI改革のキーパーソンたち

中山▶ 1991年、代表の丸山健太郎が長野の軽井沢で創業したコーヒー屋が丸山珈琲の原点になります。私自身、コーヒーは中学時代から飲む習慣はあったのですが、前職はコーヒーとはまったく関係ない、インフラ系の会社で仕事をしていました。丸山珈琲に入社したのは、当社が20周年を迎えた2011年で、その際にリニューアルしたロゴの運用に携わっています。その後、当社は13年に再度ロゴを現行のものに変更したのですが、その際にはガイドラインの制定や導入、店内POPやPR制作物などを担当しました。

神原▶ では、“食”つながりで次は村上農園についてご紹介させてください。当社は豆苗やブロッコリースプラウトなど発芽野菜を、全国9ヵ所の植物工場で生産する野菜メーカーです。

1978年に先代の社長が広島で創業し、90年代までかいわれ大根の専業でした。90年代後半に野菜の有用成分を高めたスプラウトを開発し、野菜を食べることで「こころとからだの健康を保つ」提案を行っています。

2007年には村上清貴が2代目社長に就任しました。私自身は1999年ごろから前職で村上農園のPRの仕事をしており、一昨年の入社以来、広報やマーケティングを担当し、ロゴリニューアルに携わりました。

井澤▶ マピオンの新メディア推進部でプランニングを担当しています、井澤です。当社は地図検索サイトの「Mapion」、位置ゲーム「ケータイ国盗り合戦」の2つのサービスをメインとするBtoC事業と、各サービスを活用した法人向けソリューションを提供するBtoB事業を展開しています。私は前職、広告会社でマスキャンペーンやインナーキャンペーンに携わってきたこともあり、ブランディングというものと近いところで仕事をしていたのですが、入社後に当社のリブランディングが必要と強く感じ、直談判のような形で社長や事業責任者にCIのリニューアルを提案したという経緯があります。

大槻▶ ウェブサービス系列で、最後にサイボウズのご紹介をさせてください。当社は創業以来、グループウェア*1一本でサービスを展開してきている会社です。私自身は入社以来グループウェアの広告を担当してきましたが、2012年からはコーポレートブランディングを中心に、オウンドメディア「サイボウズ式」の立ち上げなどに携わってきました。当社は今後、単なるグループウェアを提供する会社ではなく、「働き方変革」に真剣に取り組んでいる会社であることを一層アピールしていこうと考えており、今回のCIの刷新もその取り組みの一環となります。

世界を意識したリニューアル

中山▶ 先ほどお伝えしましたが、当社は2011年の創業20周年時、それまで漢字のみだったロゴを、エンブレム付きのものに一度変更しています。コーヒー屋というのは、企業成長の過程で独特な変化を遂げるのが特徴で、大抵は一人のマスターが営んでいた店が大きくなって会社になりますから、「ブランドの価値=創業者であるマスター」となるケースが非常に多いのです。当社も例外ではなく、丸山珈琲といえば創業者の丸山健太郎を思い浮かべるお客さまが多く、会社の名前よりも丸山健太郎の方がブランドとしての価値が高くなっていました。そこで、20周年を機に、会社のブランドイメージをオーナーではなく丸山珈琲そのものを主体とするべく、その後運用してきました。そして、ブランドの価値を会社におきつつも、創業の起源を大切にと誕生したのが、創業地の長野・軽井沢の森の中にある小さな喫茶店をイメージして作ったエンブレムでした。

大槻▶ それから漢字の表記を英語に変えたということは、よりグローバルな視点を意識されたということなのでしょうか?

中山▶ まさしくその通りです。当社のオーナーは1年の3分の1を海外の生産地などへ足繁く通っており、海外ではバイヤーとしての認知度が大変高いです。また、1度目のリニューアルの2年前から、当社のバリスタが5年連続でバリスタ世界選手権の日本代表に選ばれたこともあり、丸山健太郎と産地のつながりの強さや、世界のコーヒー業界での丸山珈琲の認知度が急に高まっていった時期だったのです。皆さんご存知の通り、コーヒー文化は国内よりも海外の方が盛んで、今後世界の舞台に丸山珈琲の名を認識してもらえるようにロゴの漢字を取るかどうか、何度もオーナーと議論を重ねました。その結果、2013年に過去にとらわれるのではなく、これから丸山珈琲に出会う人たちと長く付き合っていくためにも、思い切ってこれまで使ってきた漢字のロゴを取り、英語の表記を加えることになったのです。

大槻▶ グローバルの視点を意識した、という点ではサイボウズも似たような背景があります。当社は、私が入社したちょうど10年前の2005年ごろからM&Aを始め、データセンターなど本業以外の事業を買収して拡大する動きがありました。その過程でグローバルに会社を大きくしていこうという流れが当然出てきて、「この際、ロゴも変えてしまおう」という話がよく社内で持ち上がっていたんです。しかし、グローバルに展開するなら、そもそも「Cybozu」なんて発音できないですし、いっそのこと社名を「グループウェア株式会社」とかに変えてしまおうといった意見も出て、とうとう収拾がつかなくなってしまっていました。

でも、同じ時期に社長が「私たちが提供している価値って何だろう」と問いかけてきて、一度社内で企業ビジョンを考え直す機会があったんです。結果、「私たちはお客さまに、グループウェアを通じてチームワークを提供している会社なのだ」と再定義しました。そしてそれが定着した昨年、もう一度ロゴを見直そうと、社長からリクエストがありました。

神原▶ ロゴを変えるためにかなり長い時間を割いたのですね。

大槻▶ そうなんです。そうこうしているうちに、当社の商品もインストールして使うパッケージものより、クラウドサービスの売上が順調になり、サービス自体もグローバルに使われるフェーズまで進んできました。

加えて近年、当社は育児休暇を6年とし、在宅勤務や副業も許可することで、時間・場所に制限なく働ける「働き方改革」というものに力を入れてきています。その結果、自社制作の働くママをテーマにした動画が100万回という再生回数を記録したり、社長の青野慶久が“イクメン社長”としてメディアに露出しはじめたりと、会社のビジネスとブランドが昨年を境に大きく変化しました。そこで、「変えるなら今だ」と、ようやくCIの変更に本腰を入れたんです。

    丸山珈琲 
    グローバルに認知されるシンボルづくり

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    パッケージは「置き換え期間」を設定 
    2014年4月から2015年3月までをパッケージの「置き換え期間」と設定。パッケージなどの変更過程もあえて発信することで、消費者を楽しませながら新たなロゴを移行した。



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    コーポレートカラーは白黒 
    従来は「コーヒー屋のナチュラル感」を表現したクラフト紙の紙袋だったが、今回はグローバルも意識して白黒のものへと変更した。



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    店舗でも新ロゴを発信 
    2013年12月にオープンした西麻布店、2014年2月にオープンした長野店では新ロゴを導入。他店舗は順次切り替えていく予定。

    丸山珈琲 企業ロゴ変更プロジェクト
    課題・背景 オーナー、バリスタの活躍の場が広がり、世界的に認知度が高まりつつあった
    目的 世界中の誰が見ても、MARUYAMA COFFEEと認識できるようなシンボルをつくる
    プロジェクト体制 〈社内〉代表、ディレクター、マーケティング・広報(社内3名)
    〈社外〉ロゴデザイン:スワミヤ氏(スワデザインスタジオ) 坂本学氏(アローグラフ)
    スケジュール (社内・社外へのPR含む)2014年4月~2015年3月を「置き換え期間」に設定ロゴのリニューアル過程をブログなどで発信しながら、在庫品などをリニューアル
    制作したツール コーヒー豆のパッケージ、紙コップ、紙袋など

「変わった」が分かるデザインに

神原▶ 村上農園の場合は社内の意識改革という要素が大きかったと思います。当社は創業者が30年以上にわたって会社を牽引し …

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