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大塚家具「お家騒動」にみる 社内有事に広報は中立を貫くべし

山口利昭(弁護士)

頻発している、企業コンプライアンスや内部統制に関する企業リスク事例。危機に備え、企業イメージの構築・発信を担う広報担当者が押さえておくべき企業法務とは。今回は、「お家騒動」に揺れる大塚家具について解説する。

“父娘プロキシーファイト”はメディアを巻き込む展開に
父娘の壮絶な委任状争奪戦(プロキシーファイト)に発展した今回の騒動。3月12日、大塚家具がHPにアップした文書では、創業者の大塚勝久氏のコーポレートガバナンスを批判するとともに、「配慮ある議決権の行使」を求めている。

支配権争いに巻き込まれる広報

大塚家具(東証JASDAQ)を巡る「お家騒動」がマスコミで大きく報じられている。創業者である大塚勝久氏と、3月1日時点で現社長として経営の舵をとる勝久氏の長女・久美子氏との経営支配権争いである。勝久氏は同社の大株主としての地位を利用して株主提案権を行使し、一方、久美子氏は勝久氏の株主提案に反対し、騒動は株主総会における委任状争奪戦に至る勢いである(3月1日現在)。双方は、一般株主の支援をとりつけるために連日のように大演説を繰り広げているが、演説の内容や演出などを見る限り、おそらく双方とも法律事務所(弁護士)のほかに、広報コンサルタントが支援をしているものと思われる。

社長解任劇の一方の代理人として、企業の支配権争いに関与することがある。社内派閥や創業家親族間における騒動が表面化することは、当然に社内を混乱させて企業価値を毀損するものであるから、できるだけ秘密裏にしたい。

しかし、一度表面化してしまうと、どちらにも「人生のかかった」社員たち、とりわけ中堅幹部以上の社員らが、将来の出世と社内での処遇をかけて支援をする。したがって、争う当事者たちは引っ込みがつかなくなる。親族間のお家騒動は、社員をも巻き込んで大きな「社内有事」に発展する。

ではこのような社内有事に立ち至った企業の広報担当者は、どのような立場にあるのか。会社の指揮監督下にある広報担当者としては、現経営陣の代弁者として粛々と企業広報に勤しむべきなのであろうか。しかし、社内有事において、現経営陣は真実を社外に伝えることができるのだろうか。また、経営者と対立する側が委任状争奪戦で勝利を収めるとなると、あっという間にリリース内容が訂正されてしまうかもしれない。社内有事は広報担当者の力量が試される場面である。

社内有事の企業価値毀損リスク

2013年6月、川崎重工業の臨時取締役会において、突如同社の社長が解任される事態となった。社長は三井造船との統合を進める方針だったが、多くの取締役がこの方針に反対し、取締役会で社長解任の動議が可決されたのである。社長解任直前には両社の統合に関する憶測記事が飛び交っていたが、これに対して同社は「そのような統合協議の事実は一切ない」と公表した。しかし、この社長解任劇の直後、同社は「統合話はあったが、白紙撤回する」と訂正した。発表内容は二転三転し、一般株主はその都度企業のリリースに翻弄されることとなり、同社は東証をはじめ多くのステークホルダーから批判を浴びた。

社内有事の中でも、経営支配権争いは ...

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