デジタルコミュニケーションに取り組む企業にとって、効果検証の方法は課題だ。サッポロビールの森勇一氏が重視するのは「ファンづくり」を主眼とした考え方。デジタルマーケティング室を中心に、社内の情報共有や営業支援にも取り組んでいる。
成果を可視化し社内共有
かつて企業のデジタルコミュニケーションといえば、自社ウェブサイトやメールマガジンが一般的でした。今は、それらに加えてソーシャルメディアを運営している企業も多いと思います。
私はサッポロビールのデジタルマーケティング室にて、ウェブサイトやソーシャルメディアの管理運営をしています。主に携わっているのはFacebookページとTwitterのソーシャルメディアですが、今回のテーマである効果測定は、他社の担当者の方々と同様に立ち上げ当初から課題のひとつでした。
ソーシャルメディアを運営している担当者の多くが「効果測定が難しい」「成果が見えづらい」という悩みを抱えていると思います。「エンゲージメントを向上させることによってどんな効果が得られるの?」と言われる担当者もいるでしょう。当社はこういった状況に、「目的を見据えて指標を定めること」「結果を適切に社内へ展開すること」の2つで対応しています。
効果測定の目的は、活動の改善のためにはもちろんですが、私は活動の成果を可視化して社内に共有し、営業支援へつなげることも重要だと考えています。その連携やスピード感などから、当社のウェブ運営は基本的に内製で進めています。実際にデジタルマーケティング室では、別組織であるブランド戦略部や営業部から「こんなデータがほしい」という要望があれば、小1時間で出せる仕組みを整えています。
本稿では、サッポロビールのオウンドメディア運営の目的、どのように効果測定をしているのか、さらに社内への展開までをレポートします。
一人ひとりを知りファン育成
当社のデジタルコミュニケーションの目的は、ずばり「ファンづくり」です。サッポロビールが運営しているオウンドメディアは、大きく分けてウェブサイトとソーシャルメディアの2種類がありますが、目的は同じです。
もう少し具体的に言うと、デジタルコミュニケーションを介して優良顧客を育てたいと考えています。一人のお客さまとサッポロビールとの距離が縮まることが大事なのはもちろんですが、そこにはさらに「その人を通して友人・知人にファンが広がっていく」という効果が期待できます。
この考えを表したのが、図1です。昨年、当社は新たにウェブ戦略を策定しました。そこで打ち出した考えのひとつがこちらです。メールマガジンやソーシャルメディアの投稿をフックに、オンラインで様々なブランド体験をしていただく。それを感動するくらいのレベルにできれば、外へ発信してくれる確率が高まります。すると、今度はその人とつながりがある新規ユーザーが関心を持ってくれて、ブランド体験に至る。ファンと新規ユーザーは、このようにつながっているのです。
ここでは当然、ブランド体験の質が問われます。どんな体験が好まれるのかは …