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作家が危機対応をズバッと指南!

西宮市長×テレビ東京「偏向報道」騒動にみる 取材拒否は伝家の宝刀か

城島明彦

危機を乗り越えるための対応方法は、時事ニュースの中から学べる点が多くある。取材される側と取材する側の両方を経験し、広報業界を30年以上見続けてきた作家・ジャーナリストが、危機対応の本質について解説する。

西宮市長「偏向報道お断り」

兵庫県西宮市で起きた「偏向報道事件」は、“広報の危機管理のお手本”のような出来事だった。

1995年1月17日に発生した「阪神淡路大震災」から20年が過ぎたが、その時期にはほとんどのメディアが特集を組むなどした。その中に、大震災で自宅を失った被災者に市が提供している「借り上げ復興住宅」の返却期限が迫っていた問題があった。その件で、テレビ東京は1月13日に西宮市長らに取材し、15日の『NEWSアンサー』(月~金曜16:52~17:20)で流した。

それを系列のテレビ大阪で見た西宮市長は「市は住み替えに伴う支援策も打ち出しているのに、それには一切触れず、市が入居者を追い出しているとの印象を与える。偏向報道だ」と激怒し、23日の定例記者会見で「偏向報道と判断したメディアには抗議し、改善されない場合は今後の取材を拒否する」といったのだ。

取材条件をめぐる問題点

市長が「メディアに求めた取材の条件」は4点だが、それには問題点がある。

【1】取材を受ける際は、市民の誤解を招かないために、市として市民に伝えるべき内容を提示して、確実に報道してもらうよう要望する。
【問題点】「市」は「当社」、「市民」は「消費者」と言い換えて読むと、理解しやすい。「広報する側の願望どおりにメディアが報じるとは限らない」ということが分かっていない。

【2】テレビ取材を受ける際は、広報課が立ち会い、ビデオ撮影を行う。
【問題点】取材される側も録音して当然。ビデオ撮影は株主総会、決算発表、社長記者会見などでは当たり前だが、テレビ局の取材にのみビデオを使うとなると信頼関係を損なう。

【3】複数の報道機関による過熱取材となる場合は、個別取材による対応ではなく、レクチャーの場などを設定して対応する。
【問題点】取材殺到の気配を察知したら、早めに記者会見を開いて質疑応答を行うべきだ。「レクチャー」などと考えること自体、「上から目線」と反発を受ける。

【4】報道機関が「放送法第四条の趣旨を大きく逸脱し、重大な誤解を与える報道」を行った場合は、文書または口頭での抗議を行い、その旨を市の広報媒体で発信するとともに、改善を求める。
【問題点】法律を持ち出せば、大事(おおごと)になるだけ。放送法「第四条」(放送番組の編集)とは次の4つだ。
(1)公安及び善良な風俗を害しないこと、
(2)政治的に公平であること、
(3)報道は事実を曲げないですること、
(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

市長が言いたいのは(3)と(4)だが、放送法ではその前の「第三条」で「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」とあり、テレビ局はこの文言を盾にして突っぱねることができる。

痛み分けで終わった珍騒動

西宮市長とテレビ東京のバトルは ...

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