SNS対応は一歩間違えば企業評価を大きく損ねることにもなりかねない。一方、クレーム対応に詳しい谷厚志さんは、ネガティブ投稿への対応で高い広報効果を上げることもできると話す。
怒りを笑顔に変えるには?
クレーム対応─。これまでは広報とは縁が薄かったが、SNSで顧客と直につながるようになったことで、ダイレクトに顧客からクレームを受けたことがある広報担当者もいるかもしれない。ソーシャルメディア上のクレーム対応は、一歩間違えれば炎上にもつながることがある、企業レピュテーション形成にもかかわる、重要なPR担当者の任務だ。
全国の企業や自治体を対象に、年間200本以上の講演活動を行う日本クレーム協会代表理事で、クレーム・コンサルタントの谷厚志さんも、最近講演会などで広報担当者などから相談を受ける機会が増えている。最も相談が多いのは、SNS上でのネガティブな書き込みへの対応方法だという。
「お客さまからのクレームをカイゼンのきっかけとし、業務に活かすアドバイスと捉えられる企業は成功している企業が多いです。一方、クレームは“処理するもの”と考え、軽んじている企業はSNS上でもネガティブな書き込みをされやすいですね」と、谷さんは力説する。
「お客さまはたった一度嫌な体験をしたからといって、SNSにクレームを書き込もうという人は少ないです。不満に思うことがあり、それを担当者に伝えたところ、『お客さまの責任ではないですか?』などと切り返されて、嫌な思いをした人が、ネガティブな書き込みをしたり、マスコミに情報を流したり、といったケースが多く見られます。ネガティブなコメントを書かれないためには、まずは現場での初期対応が重要だと言えます」。
炎上を招くNG対応とは
では、ネガティブな書き込みをされた場合、どう対応すればいいのだろうか。谷さんが「絶対にやってはいけない」と強調するのは、(1)投稿を削除する(運営者に削除依頼を出す)こと、(2)反論すること─だという。
「講演先で参加者の方の話を伺うと、どう対応していいのか分からず、削除してしまうという方が一番多いですね。ただ、投稿を削除された側にしてみれば、『無視された』と同じこと。さらにひどい書き込みをしたり、マスコミに情報を流したりすることもあります」。
一方、谷さんによると、全クレームの1~2割は、顧客の勘違いや誤った思い込みによるものだという。しかし、仮に相手の勘違いによる投稿だったとしても、それに対してSNS上で反論することは、訴訟沙汰にもつながる危険な行為だと谷さんは強調する。
「実際に『SNSというオープンな場で反論され、恥をかかされた』と、お客さまが企業を訴えた例もあります。仮に、お客さまの勘違いによるコメントだったとしても、一度相手の主張を受け入れた上で、『正しく理解をしてもらえなかった、勘違いさせてしまった当社が悪かった』という姿勢を見せられるかどうかがポイント。クレーム対応の基本は …