広報業務において重視される、新聞・テレビなどのメディアリレーションズ。ところが朝日新聞問題を皮切りに、既存メディアへの風当たりはより厳しいものに。元フジテレビ解説委員の安倍宏行氏は、取材方法などの問題点を多数指摘する。
SNSへの感度が鈍い新聞
結局、レガシーメディアは何も変わらない。そう断ぜざるを得ない1年だった。レガシーメディアと言えば聞こえはいいが、要は「既存メディア」のことだ。今回、特に新聞、テレビについて書こう。
東日本大震災以降、読者や視聴者から信頼性に疑問符を突き付けられ続けている既存メディアだが、この夏、衝撃が走った。朝日新聞の二つの吉田ショック(吉田証言と吉田調書)である。言うまでもないが、クオリティーペーパーと自他ともに認める同新聞が、よりによって従軍慰安婦報道の一部を虚偽だったと認めたり、大スクープとして報道した内容を間違いでした、と立て続けに発表したのだから、既存メディアに批判的でなかった読者も失望したに違いない。
さて、その朝日新聞だが、記者にTwitterアカウントを自由に持たせていることは有名だ。これだけ自由に記者や編集委員がつぶやける新聞社は朝日だけだろう。その“真価”が発揮されたのは、ジャーナリスト・池上彰氏のコラムが一時掲載を拒否された時だった。
この問題について朝日新聞が9月3日夕に翌日朝刊の掲載を発表するまで、多くの朝日新聞記者がツイッターで「失望した」などと書き込んだ。こうした記者のつぶやきはすぐにネットで調べられ、まとめられるのがネット時代の常識である。最終的にはコラムが掲載され、「現場の声が会社を動かした」などと評価する声もあったが、考えてもらいたい。もし、一般の企業で同じようなことが起きたらどうだろう。
会社の方針に従業員が異を唱え、次々とSNSに投稿する状況を想像してみてほしい。「社内の統制はどうなっているのだ」と批判の的となり、レピュテーショナル・リスクが高まり株価が暴落するだろう。メディアの危機管理意識は、他の企業から見て相当ずれていると思われても仕方がない。
社員がSNSに投稿することを禁止することは法的にできないだろうが、少なくとも会社の不利益となることを自由につぶやいていいのか、という議論の余地があるはずで、社内のガイドラインを徹底すべきではないか。常々、企業倫理や企業の社会的責任について声高に語るメディアこそ、社内の危機管理について考えるべきだろう。
Twitter取材に厳しい目線
ガイドラインといえば、記者の取材方法にもネット上でチェックが入った。2014年9月27日、御嶽山噴火発生時である。新聞、テレビ、通信社らの記者がTwitterを使い ...