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リスクと広報

経営層を辞任に追い込んだ アクリフーズ広報対応の失敗

アクリフーズ(マルハニチロ)冷凍食品に農薬混入

あの不祥事は、なぜあれほど世間から批判されたのか─?顧客情報漏えいからフードテロ、取引先・子会社の不祥事まで、2014年の危機管理広報の誤りを専門家と振り返りながら、広報の視点で会社を守り、評判を高めるためのポイントを徹底解説します。

事件の経緯

1月25日、群馬県警はマルハニチロホールディングスのグループ会社「アクリフーズ」群馬工場で製造された冷凍食品から農薬「マラチオン」が検出された事件で、当時49歳の契約社員を偽計業務妨害容疑で逮捕した。2013年11月に消費者から苦情が来ていたにもかかわらず、同社が自主回収を始めたのは12月29日のこと。

元帝人広報 萩原 誠氏はこう見る


過去のリスク事例の
教訓が活かせなかった

危機管理広報の視点からの問題点は5つある。

(1)2013年11月13日以降、異臭がするなどの消費者クレームが20件あった。さらに12月27日には農薬が検出されたにもかかわらず、商品回収の記者会見が12月29日と遅れたことが致命傷。

(2)12月29日に健康被害を過小評価する社長のタブー発言「コロッケは子どもが60個食べないと中毒症状は出ない」。当然のごとく、メディアに厳しく追及されて、2日後に「子どもが8分の1食べると吐き気や腹痛を起こす恐れがある」と発言を修正。

(3)12月31日の会見では、食品企業の生命線である品質管理体制のずさんさが次々に露見した。安全基準を間違っていた、保健所への報告を失念、など「知識が不足していた」の連発。こうなると広報部の対応の限界を超える。

(4)グループ会社間の危機管理の一元化が欠落していた。親会社(マルハニチロHD)、食品事業会社(マルハニチロ食品)、製造子会社(アクリフーズ)、という複雑な関係にあったからこそ、食品会社の生命線である品質リスクの一元化は経営の最重要課題だった。

(5)情報公開の大幅な遅れ、謝罪会見での社長のタブー発言、記者会見の時間設定のミスなど、不祥事発生後の広報対応の失敗は広報セクションの責任である。

マルハニチログループの広報対応の失敗の最大の原因は、会社の存続すら危うくすることが現実になった過去の食品関係企業の失敗事例を教訓にしなかったことである。2000年の雪印乳業の食中毒事件、2007年の不二家の賞味期限切れ材料使用事件、2008年の中国製餃子の中毒事件などを反面教師にして対策を練っていれば、今回の迷走はなかった。広報部は「危機管理の司令塔」だ。危機発生後のマスメディア対応だけでなく、危機の予兆を迅速に把握し、リスクが会社の危機にならないように、社内を説得して準備(組織整備、従業員の意識改革など)することは広報部の責任である。

リスク専門家 白井邦芳氏はこう見る


フードテロへの対応は
時間との勝負

フードテロという予想しがたい原因とはいいながら…

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