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リスクと広報

最初の会見が命運を分けた、ベネッセの顧客情報漏えい対応の問題点

ベネッセコーポレーション 顧客情報漏えい

あの不祥事は、なぜあれほど世間から批判されたのか─?顧客情報漏えいからフードテロ、取引先・子会社の不祥事まで、2014年の危機管理広報の誤りを専門家と振り返りながら、広報の視点で会社を守り、評判を高めるためのポイントを徹底解説します。

顧客向けに発送されたダイレクトメール。中にはお詫び状が同封されていた。

事件の経緯

7月9日、ベネッセコーポレーションの原田泳幸社長は、顧客の氏名、住所、生年月日などの情報が漏えいしたと発表し、謝罪した。9日の会見では金銭的な補償はしない方針を示したが、7月17日の会見で200億円分を補償すると発表。漏えい件数は9月時点の同社の発表によると3504万件に上るという。

メディアトレーニング専門家 佐々木政幸氏はこう見る


“逃げない広報”が心の通った記事を生む

この事件の広報対応で最もまずかった点は大きく分けて2つある。

「御社は加害者ですか?それとも被害者ですか?」という記者側からの質問に対し「現時点では加害者です」と答えた点だ。この場合、「現時点」などという言葉を使う必要があるのだろうか。個人情報を漏えいさせてしまったのは外部の悪意のある社員なのだが、利用者にしてみれば「そんなことは関係ない」のだ。情報を漏えいさせてしまった責任はすべてベネッセにあるし、そこには「現時点」などという責任回避を匂わせる言葉など必要ない。

また、利用者への補償について、最初の会見で「金銭的な補償は検討していない」と明言し、4万件以上に及ぶクレームが寄せられたことから急きょ、再度会見を開き、200億円をかけて補償しますと説明したことである。

最初の謝罪会見で「顧客の個人情報は、重要な情報ではないのか?」という疑念をお客さまはもちろん社会一般に持たれてしまい、その後、200億円という、同社にしてみれば「誠意ある金額」を提示しても、「その程度なの?」という評価しか受けなかった。これは明らかに順番を間違えた対応だった。情報流出させてしまったのは企業側の責任であり、お詫び対象となるお客さまの範囲や、どのような補償を考えているのかを真っ先に決断して説明するべきであったにもかかわらず、相手(被害者)の立場に立った対応ができなかった。

「弊社として誠心誠意、補償をさせていただきます」となぜ、最初の謝罪会見で言えなかったのか。顧客情報が外部へ流出または漏えいした場合、誠実にかつ正確な対応を企業側に行う意思と姿勢があるか否か、その対応を実は消費者が一番冷静に見ている。

さらに言えば、被害に遭われた方々にすべてをご説明させていただく(するのではなく、させていただく)という姿勢がなければ、記者会見で深々とお辞儀をしたり、どんなに表情を取り繕っても、その後の消費者への対応で(近くで観察しているマスコミに)すべてを見抜かれてしまう。

企業不祥事の場合、企業の広報はマスコミから罵声を浴びせられることもあり、逃げ出したくなることもあるだろう。しかし、被害に遭われた方々に広く納得感のある説明をするには、手前味噌の自社ホームページだけではなく、マスコミの力を借りた「謝罪」と「説明」記事が必要となる。そこには企業の説明責任を果たすための“逃げない広報”が必要であり「皆さんのお力をお貸しください」という潔さが求められる。その先に、初めてマスコミとの一体感が生まれ、心が通った記事となる。「責められながらも攻める」広報を企業はもっと習得すべきである。



調査会社社長 古野啓介氏 はこう見る


7月9日の不用意な発言が後の報道に影響を与えた

ベネッセの情報セキュリティ体制の運用が不適当であったという意見は否定できないが ...

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