規制対象になるレビュー対策
ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。
ウェブリスク24時
ブログや掲示版、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。
『広報と宣伝のグレーゾーン』
KLMオランダ航空がネット動画で新たに遺失物担当になったという犬を紹介し注目を集めたが、後にそれが単なる宣伝目的で制作されたものと判明して大きな不評を買った。
KLMオランダ航空が搭乗客の「忘れ物」対応をワンちゃんが担当し始めたという動画ニュースを公式チャンネルで公開、世界中のメディアが報じて話題になった。
特別な訓練を受けたビーグル犬が機内の忘れ物を持ち主の元に誰よりも早く届けるというのだ。
ところが数日後、その動画は単なる宣伝目的で作られたもので、本当のサービスではないことが判明。多くのメディアで「がっかりだ」「もう人も犬も信じられない」といった記事が出た。
もっとも、メディアが「騙された」のには理由があった。まずクオリティの高いニュース映像の形式で制作された動画が公式チャンネルで公開されたこと。そしてKLMのサイト上にオランダ語と英語でその情報が公開されたことだ。公式サイトに「お知らせ」が出たことで、多くのメディアが「KLMの新サービス」としてニュースにしたのである。
ソーシャルメディアの施策は今、話題性や情報の拡散を効果に狙うものが多い。その点で言えば、今回の動画は成功と言えるのかもしれない。もちろんユーモアとして受けとめる人もメディアもあるだろう。また、そもそも害がないという考え方もある。
しかし、企業が発信する情報の信頼性の面から言えば、これは極めて危うい。広報と宣伝のグレーゾーンなのだ。
エイプリルフールやイベントなどの企画ならまだ理解されよう。しかし今回のように外部から判断がつかず、冗談が冗談と分からないままの情報が発信され、広められることによって、今後、その企業から出される情報自体が信頼されなくなる危険性がある。「もう人も犬も信じられない」というメッセージはシャレのようにも読めるが、同時にその企業に向けられたメッセージでもある。
これは発信の仕方の問題であって受けとめ方の議論ではない。「本当のような嘘」と「嘘のような本当」の情報は発信側で区別されなければならないのだ。当然そこには明確な社内ルールが必要だろう。
公式サイトから情報発信するのは広報部門だけではない。プレスリリースを出さなかったとしても、ネット上にある情報だけでメディアに報じられる可能性もある。
今回の場合は、自社サイト上で「嘘」が明らかになる前に、動画を制作した広告会社の情報が外部にある広告系サイトに出たことから「嘘」が発覚した。新サービス開始と報じ、またそれを信じた人たちには決して良い印象は残らないだろう。
ビーンスター 代表取締役 鶴野充茂(つるの・みつしげ)国連機関、ソニーなどでPRを経験し独立。日本パブリックリレーションズ協会理事。中小企業から国会まで幅広くPRとソーシャルメディア活用の仕組み作りに取り組む。著書は新刊『なぜ経営者は「嘘つき」と言われてしまうのか? PRのプロが教える社長の伝え方・話し方』(日経BP社)ほか25万部超のベストセラー『頭のいい説明 すぐできるコツ』など多数。公式サイトは http://tsuruno.net。 |