頻発している、コンプライアンスや内部統制に関する企業リスク事例。今回は、定義があいまいで識別が難しい「反社会的勢力」について広報担当者が押さえておくべきリスクと対応策を解説する。
不当要求排除から関係断絶へ
最近は、反社会的組織の資金源を断つことがテロの危機に直面している世界各国の共通課題である。日本でも、対策強化への国際間連携を進めている。しかし、マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金規制など、各国の対策を評価する国際組織である金融活動作業部会(FATF)は、日本の法整備が不十分である、と名指しで日本を批判した(9月26日付に日本経済新聞朝刊記事に基づく)。
日本の企業社会では、かつて「総会屋」が株主総会を闊歩する時代があり、また機関紙の購読要求、用心棒代の強要など、反社会的勢力による不当要求が問題とされてきた。しかし、2007年の犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(通称「政府指針」)が公表され、また2011年には(47都道府県の最後に)東京都暴力団排除条例が施行されるなど、最近では不当要求がなされずとも、企業が反社会的勢力との取引関係を維持すること自体が問題とされる時代になった。日本国内のメガバンクが、反社会的勢力に対する融資を放置していたとして、社会的に大きな批判を浴び、金融庁から業務改善命令を受けたことも記憶に新しい。
このような流れの中で ...
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