欧州のメディアは日本社会や企業をどのような目で分析し、報じているのか。在英ジャーナリストの小林恭子氏が毎号、実際の報道や論調をもとにレポートします。

英フィナンシャル・タイムズ紙による朝日新聞の慰安婦報道に関する記事(ウェブサイトより)。
朝日新聞の慰安婦報道の波紋
8月の報道を振り返る中で、第二次世界大戦に関連するトピックが目に付いた。5日と6日の両日、朝日新聞が「慰安婦問題を考える」と題した検証記事を掲載した。これまでの同紙が報じた記事の一部に「事実関係の誤りがあった」ことが分かり、「一部の論壇やネット上に『慰安婦問題は朝日新聞の捏造だ』といういわれなき批判が起きている」として、「読者への説明責任を果たす」ために特集が組まれたという(5日付、以下同)。
具体的な“誤り”の1つとして、当時の体験を語っていた吉田清治氏による「済州島で慰安婦を強制連行した」という証言は虚偽だったと判断し、計16本の記事を取り消した。「強制連行」について、「1993年以降、朝日新聞は強制連行という言葉をなるべく使わないようにしてきた」ものの、記事では「女性たちが本人の意に反して慰安婦にされる強制性があった」と結論付けていた。
世界中の知識層に愛読されている英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は…
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