遅すぎる報告書はむしろ逆効果
旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)は、昨年の記者会見で作成して大きく批判された「NGリスト」について、10カ月以上経った今年8月27日、調査結果を公開した。事務所とは無関係にPR会社が勝手にリストを作成したことなどが書かれている。しかし、正式な報告書の公開までにここまで時間が経過していることで、むしろ組織の姿勢に疑問を投げかける結果となった。
ウェブリスク24時
ブログや掲示版、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。
「個人情報漏えいの波紋」
ベネッセにおける大規模な個人情報流出が明らかとなって以降、他の個人情報を多く取り扱う企業などにも影響や懸念の広がりが見られる。
今年7月に発覚した最大2300万件ものデータが流出したというベネッセの大規模な個人情報漏えい事件は、文字通り社会に大きな衝撃を与えた。
ベネッセは自社サイト内に特設ページを開設し、最新情報の更新を続けるが、全体像が明らかになるにつれて、むしろ影響範囲は広がっている。
7月後半、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が一つの「お知らせ」を自社サイト上に公開し、注目を集めた。CCCと言えば、ベネッセと同様に大量の個人情報を取り扱う企業である。
「お客さま情報のお取り扱いについて」と題したその「お知らせ」は、CCCが保有するTポイントカード会員情報の管理について、会員の名前・住所など個人情報を社外に提供することは一切ない、という簡単なものだった。しかし、それは逆に言えば、個人情報の管理について多くの問い合わせを受けていることを示す象徴的なニュースだった。
今回のように大規模な事件や事故が起きた際、社会の関心は類似の仕組みで運営されている組織にも及ぶ。関連報道の中で、渦中の会社でなくとも取材や問い合わせ対応に追われることがよくあるのだ。
広報部門としてはこうした状況に際して、いち早く社内体制の再確認と、情報集約を急ぐ必要性が生まれる。管理・運用方針や体制はもちろん、具体的な情報量や内訳など、考えられる問い合わせ内容に照らし合わせてまずは情報を整理しておくことだ。
CCCが公開した「お知らせ」には、多くのネットユーザーが反応した文言があった。わずか5文で構成される「お知らせ」だったが、ある一言に反応が集中した。次がその該当箇所だ。
「当社からお送りするダイレクトメールやEメールなどは、当社名義でT会員の皆さまのみにご案内をしておりますので、どうぞご安心ください」「今後とも、お客さまに便利で楽しくご利用いただくためのサービス向上と、お客さまへの安心をお届けしてまいります」
この中にある「安心」という言葉である。
「“安心”という単語を使うところほど信用できない」「不安になる」「何か起きているらしい」「何の前振りだろうか、と勘ぐる人多数」「不安情報」「不安なニュースリリース」「急にどうしちゃったの?さらに不安感で一杯になったよ」など散々な言われようだ。
確かに「安心」は、言葉ではなく姿勢や取り組みで感じさせるものである。広報部門としては、迅速で具体的な情報提供と、日ごろからの地道な取り組みによって信頼を獲得しておきたい。
ビーンスター 代表取締役 鶴野充茂(つるの・みつしげ)国連機関、ソニーなどでPRを経験し独立。日本パブリックリレーションズ協会理事。中小企業から国会まで幅広くPRとソーシャルメディア活用の仕組み作りに取り組む。著書は新刊「なぜ経営者は『嘘つき』と言われてしまうのか? PRのプロが教える社長の伝え方・話し方」(日経BP)ほか25万部超のベストセラー「頭のいい説明 すぐできるコツ」など多数。公式サイトは http://tsuruno.net。 |