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大学ゼミナール訪問

報道分析と社会調査に力を入れる、成城大学・森暢平ゼミ

成城大学 文芸学部マス・コミュニケーション学科 森暢平ゼミ

メディア研究を行っている大学のゼミを訪問するこのコーナー。今回は新聞社出身の森暢平先生のゼミにお邪魔しました。

成城大学 文学部 マスコミュニケーション学科 森 暢平ゼミ
設立 2005年4月
学生数 3年生13人/4年生15人
OB/OGの
主な就職先
毎日新聞社、共同通信社、九州朝日放送、四国放送、東急エージェンシー、京王エージェンシー、朝日広告社、タウンニュース、クックパッド、第一生命保険、東京スター銀行、八千代信用金庫、ファミリーマート、JTB、エイチ・アイ・エス、ソフトバンク、JA 湘南など

成城大学文芸学部に初めてマスコミュニケーションを学ぶコースが設けられたのは、1956年のこと。のちに現在のマスコミュニケーション学科が誕生した。近年、メディアを学ぶ大学の学科は増加傾向にあるが、マスコミを研究対象とする学科としては伝統ある“老舗”といえるだろう。

その講義内容は「マスコミ原論」「ジャーナリズム論」「マスコミ研究法」などのほか、「社会心理学」「広告心理学」といった科目もある。今回は、そんな同学科の教授陣の中で最も若い森暢平先生のゼミに潜入。成城大学が持つパブリックイメージと同じくアットホームな雰囲気のなか、4年生の皆さんの卒業論文指導の合間に取材の時間をいただいた。

報道分析と社会調査に力点

森先生は毎日新聞社、CNN日本版編集長、琉球新報ワシントン支局を経て2005年、40歳で成城大学に着任した。ジャーナリズム研究はもちろんのこと、記者時代に宮内庁を担当した経験から、皇室に関する専門家としてテレビでコメントする機会もある。先生のゼミを選んだ学生の皆さんからは「実際のメディアの現場を知っている立場から、取材経験に基づく先生の話に興味を持った」という声も多い。

今まさに、4年生が調査・分析やインタビュー取材を進めている卒業論文のテーマはジャーナリズムから社会学まで幅広い。「地方紙と全国紙の比較」「メディアに見る、浅田真央選手のストーリー性」といった報道内容の分析のほか、千葉・松戸の女子大生放火殺人や東京・三鷹の女子高生ストーカー殺人などの事件を例とした報道被害の研究、「アダルトチルドレン」「フリースクール」といった社会性の高いテーマに着目する学生もいる。さらには「麻丘めぐみに見る、女性アイドルの一般人化」「音楽社会学」「K-POPとコリアンタウン」といったカルチャー視点の研究にチャレンジするケースも。

「大きく分けると報道内容の分析、社会調査のいずれかを選択することになります。報道分析は専用のソフトを使って100本ほどの新聞記事を集めて傾向を読み取ったり、地方紙と全国紙の論調を比べたりといった研究に取り組んでいますね」と森先生。あえて仮説などのバイアスをかけずに、客観的な事実を分析するというスタイルを採っている。

宮城・沖縄・福島で取材を経験

マスコミュニケーション学科の演習や卒論執筆にあたっては、社会調査、フィールドワークを重視している点も特徴的だ。卒論執筆に統計の手法を用いる場合もあり、大学全体では今年3月に日本アイ・ビー・エム東京基礎研究所と連携協定を結ぶといった動きもある。

森先生の授業やゼミでも、現地のインタビュー取材などに出向く機会を積極的に設けている。2012年には被災地の声を聞こうと、宮城県山元町の臨時災害FM放送局「りんごラジオ」を訪れている。2013年には沖縄でゼミ合宿を開き、新聞社や米軍基地を巡ったこともある。9月には、先生が記者時代に赴任したこともある福島の被災地を訪れる予定だ。

「新聞の記事は仮説やストーリーありきで書かれている。例えば沖縄では、新聞が米軍基地の存在を否定していても、基地の中で働くことで生活が成り立っている人々もいるという側面もある。双方の声を聞きに行くことで、新聞に書いてあることがすべてではない、と実感を持って理解してもらうことが狙いです」。事実の一部だけを切り取った報道からは見えない生の声を現場で聞いて、自分の頭で考える。そういう実体験を大事にしてほしいと森先生は強調する。

プレゼン・論文のスキルも習得

これらは「アクティブラーニング」という考え方を重視する成城大学の方針とも連動している。「卒論も文献からまとめて終わり、というケースはほとんどありません。調査やインタビューを交えて、受け身ではなく主体的に動くよう指導しています」(森先生)といい、そのベースとなっているのが文芸学部の共通科目である「WRD(ワード)」というものだ。

WRDとはWrite(書く)、Read(読む)、Debate(議論する)といったあらゆる学問に通ずる基礎を身に付けるための実践的な科目のこと。すべての学生が1年次から必ず履修しているもので、6段階のカリキュラムが用意されている。これにより論文の書き方、プレゼンテーションの技術、企画の立て方、ロジカルシンキングなどを習得する。その上で2年次からの演習に臨み、より専門分野を掘り下げた学びを深めていく。

すべての学生が同等にこれらのスキルを学んでいるため、ゼミも活気づいていくのだろう。今回の取材でも「マスコミュニケーション学科って、外からどんなイメージを持たれていますか?」「なぜ先生を取材しようと思ったんですか?」といった編集部への鋭い質問が次々と活発に飛び交う様子が印象的だった。

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「メディアとナショナリズムの関係が分かりやすく書いてあり、メディアをめぐる権力構造について示唆的だから。ただ、それはメディアが権力的というより、メディアをめぐる私たちのなかの見えない権力があぶりだされていて、一般の人にも容易に理解できる」と森先生。

森 暢平先生 PROFILE

「記者クラブに通う」記者の働き方に疑問

戦後日本の記者クラブの歴史や構造の研究実績も。「記者の仕事はメディアを通じて世の中を良くすることであるべき」という強い思いがあり、漫然と記者クラブや事件現場に向かうことが“標準作業”となっている記者の働き方に疑問を呈している。『天皇家の財布』(新潮社、2003年)など皇室取材の経験を活かした著書、論文も多数。

森 暢平(もり・ようへい)
1964年埼玉県生まれ。1990年京都大学文学部史学科卒業、毎日新聞社入社。福島支局、社会部。1998年に退社し、国際大学大学院国際関係研究科。2000年修了し、CNN日本語サイト編集長として米アトランタへ。2002年、琉球新報ワシントン駐在記者。2005年、成城大学。

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学生主導でCATV番組制作、中央大学のジャーナリズムプログラム
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