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本田哲也のGlobal Topics

第61回カンヌライオンズ開催、世界のPRは「超成果主義」に向かう?

本田哲也

Tattoo Skin Cancer Check

タトゥーの彫師に皮膚がん診断の免許を与えた、ブラジルの「Tattoo Skin Cancer Check」。PR部門でブロンズを受賞した。

今回のコラムは「カンヌ」です。編集部さんによると、この号は「カンヌ祭り」的な内容になっているそうなので、本コラムも便乗しようという目論見だ。とはいえ、カンヌ基本情報や現地レポートは、この前にじゅうぶん読まれてるだろう。内容がかぶったら、弱小コラムはあっさり読み飛ばされるだろう。......ということで、ここでは僕なりの勝手な視点で、PRライオンを斬る!ことにしたい。

とか言いながら、いきなりグランプリから。もうご存知、米国のメキシコ料理チェーン・チポートレの「THE SCARECROW」(米国)だ。個人的には、(PRの)グランプリであるということがまだ腑に落ちてない。映像と音楽要素が素晴らしいパワフルな「コアコンテンツ」プロダクションがまずある。で、それをめちゃめちゃ露出させ、参画させる。これは昨年のメルボルン鉄道「Dumb Ways to Die」あたりの系譜に思えるんだけど、今回は特に「ゲーム」の要素が大きくなっている。確かにテーマは社会性もあるのだが、露出してエンゲージさせていく主要手段がゲーミフィケーションなのが、PR的にしっくりこないのかもしれない。

同じくコンテンツ系でも、僕は「Bald Cartoons」(ブラジル)の方がPRっぽく感じた。小児がんの子どもたちに勇気を与えるべく、40以上の有名マンガキャラが立ち上がる。どうやって?頭を丸めて(笑)。がん啓発は、とかくシリアスになりがち。けれど、課題の着眼点と解決法がとってもインサイトフルだ。「コアコンテンツをパワフルに広めていく」というアプローチが広告的なのに対して、「広めるためにコンテンツのパワーを使う」というのはPR的だなと思うのだ。「合気道的」とでもいうか。

こうした社会貢献系、いわゆる「ソーシャルグッド」は、あいかわらずPRの得意領域。しかしこのところ、「賞ねらいのエセ社会貢献系」が増えていたのも事実だ。そんな中でのアンチテーゼなのか、「超成果主義」ともいえるソーシャルグッド事例がいくつかあった。例えば「Tattoo Skin Cancer Check」(ブラジル)。やりつくされた感もある「皮膚がんの啓発」だが、啓発に終わらせない解決策のアイデアがすごい。あなたの肌をもっともじっくりと観察できる人は意外なところに─タトゥーの「彫師」たちだ。ブラジルならではだが、彼らに皮膚がん診断の免許を与えるという潔さ。

そして、究極的に成果主義ともいえるのが、異色の話題を呼んだ「Sweetie」(オランダ)。なんせ「小児性愛者1000人を検挙した」という「Result」なんだから恐れ入る。「メディア露出500件!」とは次元が違います。今年も刺激的な事例が多かったカンヌでした。ではまた来月!

本田哲也(ほんだ・てつや)

ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー/戦略PRプランナー。1970年生まれ。主な著書に「戦略PR」「ソーシャルインフルエンス」(ともにアスキー新書)など。フライシュマン・ヒラードは世界中に100拠点以上を持つ大手PR会社。

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