消費者の変化を受け、企業のリスク管理も新たな対応が求められる。「未然防止策として、トップそして従業員といった足元を見つめ直すべき」と企業広報として不祥事対応にあたった経験を持つ管野吉信氏は提言する。

システム犯罪を未然に防ぐためにも、従業員向けの教育が欠かせない。
7月はベネッセの顧客情報流出事件に始まり、米国の食肉大手OSIグループの中国現地法人「上海福喜食品」による使用期限切れ食肉販売事件、「すき家」を運営するゼンショーグループに宛てた労働環境改善に関する第三者委員会の調査報告書と、企業のリスクマネジメントにかかわる事件、問題が相次いだ。不祥事はなぜ起こるのか、起こさないようにする方法はあるのか─。今回は実例を交えながら、不祥事の未然防止策を探る。
企業理念、使命の再検証を
7月31日に公表された「すき家」の労働環境改善に関する第三者委員会の調査報告書は、ゼンショーの実態をよく表していた。深夜に1人で店舗を切り盛りするワン・オペレーションをはじめ、過酷な労働実態を示したもので、リスクマネジメントの観点からはいつ、どんな不祥事が起こっても不思議ではなかった。
これを受けて、ゼンショーは7つのすき家地域会社を設立(6月2日付)し、東京の本社で2000店舗を管理してきたのを改める。労務管理についてはゼンショーの社長直轄組織として労政部を配置する。また、常勤監査役を置くとともに社外取締役を導入してガバナンス(企業統治)を強化する。
ところで、ゼンショーグループは「世界から飢餓と貧困を撲滅する。そして、万人が真に平等で、持続可能な調和的発展を続けることのできる社会を実現する」という理念を掲げている。また、使命は「世界中の人々に安全でおいしい食を手頃な価格で提供する。そのために、消費者の立場に立ち、安全性と品質にすべての責任を負い、食に関わる全プロセスを自ら企画・設計し、全地球規模の卓越したMMD(マス・マーチャンダイジング)システムをつくり運営する」としている。
しかし、第三者委員会が ...