佐賀県武雄市では、ディー・エヌ・エーや東洋大学と連携して、小学校1年生を対象としたプログラミング教育を始めた。この舞台裏には、イノベーションが生まれる官民連携モデルがあった。
![](https://mag.sendenkaigi.com/kouhou/201409/images/031_01.jpg)
ディー・エヌ・エーの南場取締役(中央)と手を取り合う樋渡市長(左から3番目)。
小1がアプリやゲームを開発
小学生が開発したアプリが大ヒットする─。そんな時代も近いかもしれない。佐賀県武雄市では今年10月から、ディー・エヌ・エーや東洋大学と連携し、武雄市立山内西小学校の1年生を対象としたプログラミングに関する授業をスタートする。
すでに同市では、東洋大学と連携し、全児童にタブレットを配布し、自宅で動画による自習を終えてから授業に臨む「スマイル学習」に取り組んでいる。そこに、東洋大学現代社会総合研究所のICT研究開発プログラムに参加するディー・エヌ・エーが参画。実際のビジネスで培ったプログラミングに関する知見や技術を活かし、小学校低学年でも自らゲームやアプリについて制作できるようなコンテンツを作成する。
授業は、月に2回程度、放課後の時間を活用して実施。コンテンツの開発や提供、講師の派遣などに関する費用は、すべてディー・エヌ・エー側が負担する。
6月25日に武雄市で行われた記者会見で、ディー・エヌ・エーの南場智子取締役は「当社は今、国際展開に注力していますが、日本の人材力に課題を感じています。グローバルに通用するためには、母国語、英語、プログラミング言語が必要です。インターネットを通じ、どこにいても世界中の人とコラボレーションする仕事の仕方が台頭してきていますが、そこに参画している日本人は極めて少ない。また、圧倒的に吸収力が違う幼少期は、プログラミング言語を学ぶのに最も適切なタイミングだと思います」と強調した。
武雄市の樋渡啓祐市長も「武雄市は教育に命をかけています。自分で食べていける魅力的な大人になるために、早い段階からのプログラミング教育が必要。市内だけでなく、全国的なロールモデルになるようにしたい。未来の日本を支える子どもたちに、ワクワク、どきどき、楽しみながら学習してもらいたいです」と期待を示した。
民間との連携でイノベーションを
こうした企業や大学との先進的なコラボレーションが実現する背景には、樋渡市長のある考え方がある。「一つより二つ、二つより三つの力が一緒になったほうが、イノベーションが生まれる」─。全国的に話題を呼んだ、TSUTAYAを経営するカルチュア・コンビニエンス・クラブに経営を委託した図書館も、外部の優れた力を取り込みやすい同市ならでは。今や市内からも観光客が訪れるというこの図書館は、午後9時まで営業。併設されたスターバックスコーヒーでお茶を飲みながら、のんびり本を読むことも可能だ。
武雄市からシリコンバレーへ。イノベーションを生む土壌のあるこの市から、世界で勝てる人材を輩出する日も遠い未来ではない。