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大学ゼミナール訪問

「睡眠よりもメディア研究の日々」テレビの現場出身、上智大・碓井先生のゼミに潜入

上智大学文学部新聞学科 碓井広義ゼミ

メディア研究を行っている大学のゼミを訪問するこのコーナー。今回はテレビ業界出身の碓井広義先生のゼミにお邪魔しました。

上智大学 文学部 新聞学科 碓井広義ゼミ
設立 2010年4月
学生数 2年生16人/3年生17人/4年生13人
OB/OGの
主な就職先
NHK、日本テレビ、TBS、中部日本放送、新潟日報、北國新聞、東宝、松竹、角川、シネプレックス、ソフトバンク、ヤフー、サイバーエージェント、りそなグループ、日本生命、 サントリー、ライオン、東レ など

「なぜ、クックパッドは人気を集めているのか?」「トヨタの若者向けプロモーションの研究」「アニメを活用した自治体の観光PR」「宮崎駿のアニメに見る戦争観」――ユニークな研究テーマが並ぶ、上智大学文学部新聞学科の碓井広義ゼミ。現在は2年生16人、3年生17人、4年生13人が所属している。

今回は6月某日、隔週で開催されている3年生のゼミに編集部が潜入。「今日の授業は皆で雑誌『広報会議』の取材を受けるという、貴重な実践の場になります。この取材がどんな記事になるか、見届けるまでが授業です。ちゃんと『広報会議』8月号を買うように!」という碓井先生の大変素晴らしい(!)号令のもと、90分にわたる取材の時間をいただいた。

放送から映画・アニメまで研究

テレビマンユニオンで20年にわたりドキュメンタリーやドラマ制作に携わってきた碓井先生は2010年4月に着任した。新聞学科の名物授業である「テレビ制作」のほか、「メディアと文化」などの講義を受け持っている。

ちなみに「テレビ制作」は1966年に創設された上智大学の施設「テレビセンター」で行われるが、ここにはフルHD化したスタジオ環境が整っている。授業ではグループごとに企画づくりから撮影、編集という一連の作業に取り組み、制作スキルの習得だけでなく、メディアのメッセージがどのように生み出されるのか、発信者の視点から理解するのも狙いの一つだ。

ゼミの研究テーマは、放送やデジタル、映画・アニメ・広告といった表象文化研究がメインとなっている。研究内容と就職先が重なるケースも多く、「松竹に就職した学生の卒論のテーマは“メディアとしての歌舞伎”でした。また、『Yahoo! ニュース』について研究していたゼミ生が実際にヤフーに就職して、まさにYahoo!ニュースを担当しています」と碓井先生は笑う。

PR会社でバイト中のゼミ生も

毎年、卒業生の6割がメディア業界へと進むという新聞学科の中でも、放送・映像・エンターテインメント業界の志望者が多いのも碓井ゼミの特徴。OB・OGの就職先はNHKや日本テレビ、TBS、東宝・松竹など大手マスコミが並ぶ。最近ではヤフー、サイバーエージェント、サイバードなどのデジタル企業も増えてきた。

現役のゼミ生の志望を聞くと「テレビ局のスポーツ記者」「子ども向け教育番組の制作」「レコード会社のプロモーター」「舞台関連の宣伝」「辞書系の出版社」「広告会社の営業」など、やはりマスコミ関連が目立つ。

広報・PR領域への関心も高く、4年生のなかには大手PR会社に内定した学生がいる。また、現在PR会社でアルバイトとして働いていたり、「メーカーの広報の仕事に興味がある」と答えてくれたゼミ生も何人かいた。メディアの役割や強み・弱みを学べる学科だからこそ、メディアリレーションズに取り組む広報の仕事とも親和性が高いということだろう。

そんなゼミ生たちだが、第一印象は「真面目で、おっとり」だった。上智大学の校風のせいか、3年生の就職活動がまだ本格化していないせいもあるのか、各人の発言もやや控えめだ。碓井先生からは「遠慮せずOBやOGに会いに行けばいい。横並びではなく、自分の判断で積極的に動くことが大事」とアドバイスが。

ゼミでは時事問題について討論する機会を増やしているといい、最近ではSTAP細胞の論文問題やNHK会長の発言騒動について意見を交わした。「メディアで起きている問題をただ受け身で追っているだけではメディアの世界では通用しない。何か問題を投げかけられたら、自分の言葉や文章で考えを表現して“ボールを打ち返せる”力をつけてほしいんです」。

テレビの現場出身の先生に学ぶ

最後に碓井先生のゼミの面白さについて尋ねると、多くの学生から「自分が興味をもったことを研究テーマにできる」という答えが返ってきた。碓井先生のネットワークでテレビ局のプロデューサーらをゲスト講師として招く機会も多く、学科の授業で体系的なメディア論を学ぶ一方で、現場を知っている先生のゼミで得るものは大きい。

「碓井ゼミは正統派ではなく異端児、いやゲリラ部隊かもしれない(笑)。一見もの静かないい子たちだが、心の中では強い意志を持っている学生ばかりなので、自然と卒論のテーマもユニークで独自の切り口が増えていくのだと思います。断片的なカルチャーを取り上げているように見えるかもしれませんが、文化は社会の動きや問題とリンクしている。学生たちには、研究を通じて社会や人間の実相を見抜く力を養ってもらいたいですね」。

ゼミの終盤では、テレビの制作会社でのインターン募集について説明する場面も。「制作会社の現場を経験して、合わないと感じたらそれも発見。ぜひトライしてみてほしい」と碓井先生。学生時代からメディアの現場に触れるチャンスがあふれているのも、この学科ならではと言えるだろう。

『広報会議』読者にオススメ! メディアを知るための1冊

『街場の憂国会議』
内田樹(編)/晶文社/本体1600円+税

「メディアを学ぶことは“世の中をどう見るか”につながっている。内田先生の本を読むと、自分のアタマで考えることの大切さがわかるので、『街場のメディア論』(光文社新書)なども学生によく勧めています」と碓井先生。内田先生の『日本辺境論』(新潮新書)をカバンに忍ばせているゼミ生の姿も。

碓井広義先生 PROFILE

「睡眠よりもメディア研究」の日々

「月に30冊は書評用の本を読み、テレビ批評を書くために睡眠より番組チェックを優先する」という。レギュラー出演のBSジャパン『大竹まことの金曜オトナイト』(金曜夜10時54分~)のほか、北海道新聞、日刊ゲンダイ、日経MJ、ビジネスジャーナルなどに放送時評やコラムを連載中。メディア時評を掲載する「碓井広義ブログ」も毎日更新している。

碓井広義(うすい・ひろよし)
慶應義塾大学法学部卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加。20年にわたり番組制作を行う。慶應義塾大学助教授、東京工科大学教授を経て2010年より現職。専門はメディア論。著書に『テレビの教科書』ほか。

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